※刀剣男士が付喪神じゃなくて人間
※刀剣名=コードネーム
※一部刀剣男士が機械・カタカナを駆使する
※レキシューの設定大幅改変
※審神者いません
歴史修正主義者は人間に擬態する。人間の脳に作用しているのか、奴ら自身が姿形を変えているのかまだ解明されていないが、現代の科学技術では到底再現できない完成度だ。
しかしどれほど完璧で、大多数にとっては正真正銘の人間にしか見えなくとも、稀にその正体を──骨と刀で構成される化物を見破る者がいる。
そういった人間は周囲の賛同を得られず発狂していくか、歴史修正主義者によって殺されるのがオチだ。
そこで、時の政府を名乗る集団は考えた。
奴らの野望を止めるために、見える者だけの組織を作ろうと。
*
武藤春紀。四月八日生まれの二十八歳。高校卒業と同時に香川から上京。工事現場でアルバイトをしながら夜間大学に通うが、飲酒トラブルで退学。その後軽犯罪を重ねていたが、ここ一年はパタリとなくなっていた。
以上がオフィスに戻った私達に報告された情報である。
ではさっそくと推理タイムに入ろうとしたが、パートナーの説教によって完全に放棄されていた。
「女主殿には慎重さが足りないようですな。待ち伏せされていたら蜂の巣もあり得ました」
「そうね。でも人の気配はなかったし、大家を呼ぶより時間短縮になった」
「ならどうして無言で試したのですか。武器も取り出していなかったではありませんか!」
「そこにドアノブがあったから」
「あのドアノブは未開の地ではありませんし、あなたはドアノブを回すことに欲望を感じる人ではないでしょう」
「どうかしら。私がジョージ・マロリーの子孫だったら可能性はあるわ」
「なら私はナイチンゲールの子孫ですな」
「素敵な人選ね。で、あなたのどこが天使なの?」
「女主殿の鉄火場中毒を矯正して差し上げます」
「ちょっと、私に変な病名つけないでよ」
「我ながらぴったりですな」
「私が中毒者ならここにいるみんな発症してるわ!」
「あ、あの……」
おずおずとした声にハッと冷静になると、周りの視線を集めていた。
「平野。お茶を煎れてくれたんだな」
「ん、ありがとね。あと朝飲めなくてごめんなさい。前田くんにも伝えてくれる?」
「わかりました……あの、どうして二人は喧嘩しているのですか?」
「喧嘩ではないよ。注意していたんだ」
「ちょっと脱線したけどね」
熱いお茶がヒートアップした口を落ち着かせてくれる。
回収班が持ち帰ったパソコンの解析に時間がかかると言われ、彼は刀の、私は銃の手入れをして、それが終わっても待機命令のままだったから青江の後ろでお話が始まったのだ。
彼のことは、よくわからない。表象的な──たくさんの弟にいち兄と慕われていて、上品な態度と敬語を使うことは知っているが、一体何を軸に思考しているのかサッパリだ。
「その、悪かったわね。次は一言かけてから試すわ」
「私こそ少々熱くなってしまい申し訳ない」
「仲直りですね!」
顔を綻ばせる平野くんがかわいくて、思いっきり頭を撫でた。こんな弟がいたら毎日幸せだろうなぁ。
「お菓子あげるから私の弟にならない?」
我ながら誘拐犯みたいな台詞で尋ねると、照れるような怒っているような表情で「お菓子につられる私ではありません!」と断られた。残念。
「それに──」
「平野ぉーー平野はいるかぁーー!?」
よく通る声が遮り、今度は──確か膝丸さん──に視線が集まる。前は「兄者ぁーーどこにいるんだ兄者ぁーー!!」だったが、最近あちこち回っている平野くんから情報収集するという近道を学んだらしい。
では失礼します!と一礼して駆けていく平野くん。やっぱり明日持って来よう。何が好きだろう。きっと前田くんも一緒にいるだろうし、分け合えるタイプなら素直に受け取ってくれるかな?と考えていたら、青江が深いため息と共にしゃがみ込んだ。
「あ、青江殿!?いかがなされましたか!?」
「……あのね、初期化されたパソコンの復元自体なら簡単なんだよ?勿論、僕みたいな専門家にとっては、が前提だけど、君達でいうリンゴを素手で握りつぶすようなものなんだ」
「いえ、私はミキサーを使いますぞ」
「私はペストルを使うわ」
「例えに張り合わないでくれるかい?!」
そう叫びつつ立ち上がった青江はやれやれと言いたげに額に手をあてて、もう片方を軽く振った。
「選手交代だ。僕にもできると思ったんだけど、やっぱり無理みたいだ」
「どういうこと?」
「このパソコンは消し方が違うのさ。データを初期化したんじゃなくて、なかったことにしている」
「時間操作、ですか……歴史修正主義者の仕業ですな」
「裏で絡んでたって訳ね」
「恐らくパソコンを通してあの男に接触したのでしょう」
「でもなんで彼を選んだのかしら?銀行強盗は軽犯罪とは言えないわ」
「ホー・セー・アナスンの子孫かもしれませんな」
「あの顔に赤い靴は似合わない……っていうかよく知ってるわね」
「弟達に読み聞かせをするんです。好評ですぞ」
「──ここに驚きがあるって本当かい?」
ワクワクを隠さない笑顔で現れたのは、全身真っ白な鶴丸さんだった。連絡するそぶりはなかったのに、いつの間に。
「最初から彼に頼んでたら、君達は口論する暇もなかっただろうね……」
「へえ?女主はともかく一期が喧嘩するなんて珍しいじゃないか。驚きってこれかい?」
「え?いえ、パソコンのこと……ですよね?青江殿」
メランコリック青江は浮かない顔で「僕は実力に見合った仕事をするよ」と二階に上がっていった。
いつもなら「隅から隅まで暴いてくるよ。……個人情報のことだよ?」といった軽快な青江節を発揮するのに、よほどショックだったらしい。もともと機械関係は本職じゃないのだから、そう落ち込まなくていいと思うのだが……階段を上る足取りが重そうだ。あとで青江にもお菓子を恵んであげよう。
「巻き戻しと停止か。最近この手口多いな……」
そうぼやきながら高速で指を走らせる鶴丸さん。
IT関連は詳しくないが、彼の解析能力が優秀だということがよくわかる。どうして私を喧嘩っ早いと思っているのかはちょっとよくわからないが。鶴丸さんともお話が必要だろうか。
そんなことを考えているうちに、鶴丸さんの手は止まった。
「よし、これでメールは復活したぜ。事件が起きたのはいつだ?」
「昨日の二十三時頃」
「怪しいのは──こいつだな。内容も黒。犯行前日まで何件もやりとりしたのに、昨夜から音沙汰なしだ」
「まるで男が死ぬのがわかってたみたい」
「予知できるのは犯人かその共犯者だけですな」
残念ながら連絡先の設定をしていないようで、宛先と送り主の欄には英数字の羅列が表示されている。まあ仮に名前が登録されていたとしても、内容からして直接会ったことはなさそうだし、十中八九偽名だろうけど。
「では行きましょうか」
「どこに?」
「……あ」
彼は子供に聞かれてようやく空が青い理由を知らないことに気づいたという風に目を丸くした。
「そういえばこの先に関わるのは初めてでしたね。物怖じしないのでつい失念してしまいました」
「物怖じしてたらもっと安全な職場を選んでるわ」
「清々しいほど正直ですな」
「投げやりなだけよ」
言葉通りぶっきらぼうに返すと、彼はわざとらしく目を吊り上げた。
「そんな人に平野はやれませんな」
「……」
これも矯正プログラムの一つだろうか。やり方がうまい。さすが元インストラクター。
「おいおい、それ以前に犯罪だろう」
「婿にする訳じゃないわよ?」
「まさか君、確実に身内にしてから手を出すつもりじゃ……」
「ちょっと!なんであなたがそっち側につくの!」
「逆境に燃える恋ってのは浪漫があるよなぁ。婚儀は呼んでくれよ?」
「はっ倒しますぞ鶴丸殿。では作戦室に行きますか」
「手のひら返しが早いぞ一期!」
「前の職場の影響ですな」