能力「重力原理」を有する学園都市第六位の超能力者。訳あって置き去り保護組織プロテクト(オリ施設)の護衛をしている。
「あの二人どこ行ったんだよぉ……」
第十五学区、ダイヤノイドを探し歩いてもうすぐ十分が過ぎようとしている。
どうして私が中下層を歩き回っているのかと言うと、絶賛迷子中の二人にせがまれたからである。
私の仕事場は最下層なのだが、まだ幼い澪には理解できないようで「やだやだ絶対行く!」と着いてくる気満々だったので「じゃあ日曜に遊びに行こうか」と約束して機嫌を直してもらったのが昨日のこと。それを澪にぞっこんな仁が見過ごさない訳がなく、玄関先で待ち伏せしていたのが一時間前。
そして到着し、実は中下層には足を踏み入れたことがない私が子供用アメニティを案内板で探している数十秒で二人は姿を消した。
広大過ぎる中下層を全フロア探すには時間がかかる。プラス日曜の人混みだ。フードコートなんかは近づくだけでも一苦労なのに、見つけられるんだろうか。
なんで私は透視能力持ちじゃないんだろう。あの能力めっちゃ欲しい。今なら学園都市で一番欲してる自信がある。能力は一人一個までとかスーパーの挽肉セールかよって今日だけで五十回は思った私の足が乳酸地獄の案件について誰かヘルプ。
もうオーナーに頼んで監視カメラ見させてもらおうかな。
……なんてな。一人で何十台も確認するなんてめんどくさいことしたくない。直接歩き回るのと大差ないし。それにこんな私事で煩わせる訳にはいかんだろう。一応私は仕事相手だ。
「――――待てっ」
困った時はお互い様って言うけど、私らは単なる仕事な訳で。てか大抵これ言ってる人助けてばっかなんだよね。助けてもらう場面って超少ないの。リアルで見たことないわー。助けるプロって言うか専門家なのかな?あるいは人助けに燃える偽善者?
「おい、待ってくれ!」
誰か叫んでるなぁ。修羅場か?あーあ、二人が迷子になってなければ野次馬できたのに。お菓子買ってあげようと思ってたけど今日はやめよう。むしろ探し歩いてる私に献上すべきだ。実行したら絶対園長に怒られるから想像で我慢してやるけど!
「止まれ!」
周囲を見渡しながら人混みをスイスイ抜けていた私の手首を誰かが掴んだ。振り向くと茶髪で高身長、整った顔。だけどなんでだろう、ある四文字が私の頭を占領している。
「チンピラ……」
「おいコラもっぺん言ってみろ」
や、ヤダナー何モ言ッテマセンヨ?
その時、道の真ん中で互いに見合う私達を、学生集団が鬱陶しそうに通り過ぎていった。舌打ち付きで。
え、私百パー悪くないよね?後ろにいたんだから見てたよね?ちょ、離せチンピラ、私は今から正義の鉄槌をだな……離しやが……くっ、離れぬ……なんて力だ!わかった、プラチナゴリラの称号はお前にやるから!これで来世はゴリラになれるぞ!どーだ満足しいだだだだだっ!!骨っ!骨が折れちゃうぅぅぅ!!
*
近場のカフェに引きずられそうになったのを事情を説明してなんとか阻止し、歩きながら話すことになった。
まぁ私は話ないんだけどさ。「で、どちら様?」って言った時の絶望した顔見たら、流石に良心が痛んだんですよ。手首ほどじゃないけど。別に人手が欲しかった訳じゃない。別に。
プラチナゴリラこと垣根帝督は私の手首を捻り上げた手をポケットに突っ込んでいるので、今のところ手首粉砕の危険はない。もうコケてしまえばいいのに。そしたら全力で煽るのに。
「……なんだよ、人の顔じっと見て」
「うぇ、や、なんでもないです。無様に転んでしまえばいいとか思ってないです」
「思ってんじゃねーか!」
「いだっ」
こ、こいつ、この人混みの中私のふくらはぎを的確にローキックしやがった。なんてチンピラだ。
「はぁ……で、見た目はどうなんだ?」
「そこそこイケメンだし髪もサラサラだけどすぐ暴力を振るうのはマイナスかと」
「俺のじゃねーよ!!迷子の奴に決まってんだろ!」
「ああ、澪は黒髪お団子の美少女で、仁はたれ目の茶髪少年です」
「ったく……」
いや、こいつホントどうしようもねぇみたいなオーラ出してるけどこっちのセリフだからね?私が勘違いしたのはお前の言葉が足りなかったせいだからね?
だが「お姉ちゃん、良好な人間関係のためには我慢も大切なのよ?」と澪に教えられた私はぐっと堪えた。
「なぁ、二人が見つかったらどっか寄らね?」
「アンタの奢りで?」
「お前なぁ……まあ、そんくらい別にいいけど」
天は私を見放さなかったんだ……これで昼代が浮く!
くぅぅぅっとガッツポーズで喜びを噛み締めているとなぜか隣から哀れんだ目を感じた。どしたどした?
だが垣根は何も答えずに「つーかよぉ」と露骨に話を逸らした。
「迷子センターには行ったのか?」
迷子センター。迷子になった子供を預かったり同伴者が迷子の情報を放送してもらったりする場所である。
「まだだよ。そこで私は閃いた!二人と一緒に迷子センターを探そうって!」
「迷子が増えてんじゃねーか」
今度は私が蹴った。上手くいかずにくるぶし辺りに当たったが、能力を使った分威力はそれなりにあったようだ。はっはっは。そう睨むな。さてはお前チンピラだな?
「てかさ、澪の能力ならすぐに私を見つけられる筈なんだよね。だから、わざと逃げてるって可能性も微レ存」
「透視能力か」
「そんな感じー」
垣根は何か言いたげに見てきたが、そうホイホイ教えられるものじゃない。いつどんな状況でも仁が助けてくれるとは限らないのだから、澪個人の危険度は出来るだけ上げない方がいい。はぐらかすのが最善策なのだ。
「そういえば垣根のツレは?大丈夫なの?」
「一人だよ。ちょっと高層階に野暮用があってな」
「っ!この……この金持ち……!」
罵詈雑言を浴びせようと脳内の単語を漁ったのだが、口から出てきたのはただの事実だった。なぜだ、思ったことと言いたいことが逆転したぞ。脳味噌の反乱か。
「お姉ちゃん!!」
「この声は……!」
愛しの澪ちゃんの美声だ!どこだ!?どこにいるんだ!?
キョロキョロしてると垣根は「壁際行くぞ」と手を引いてきた。サトリか?!前世はサトリで今世はゴリラか!私だったら絶対拒否るぞ!
今度はちゃんと力加減をしてくれたので痛くなかった。またプラチナゴリラ発揮されてたら全力で逃げるわ。ん?さっき逃げられなかったんだ。じゃあ能力使ってギッタンギッタンにしてやろう。
復讐計画を企てながら壁に重心をかけていると、また声が聞こえた。見ると黒髪を両耳の上部でお団子にした美少女と茶髪かつたれ目の少年がいる。
「澪!仁!どこに──」
「お姉ちゃん足早すぎなのよ!!」
「え?」
聞けばどうやらずっと後ろにいたらしい。雑踏に紛れて声が届かず、それでもついてきていたとか。
「けっ、健気……!ごめんよぉ、私が悪かった!お詫びにお菓子いっぱい買ってあげるね!」
「いや、ねーちゃんいつも金欠じゃん。そんな金あるの?」
「いい加減うまい棒じゃごまかされないわよ?」
「心配ご無用!ここに自ら財布役を申し出てくれた超親切なふし……お兄ちゃんがいる!気兼ねせずなんでも食べるがよい!」
「「「うわ……」」」
冷ややかな視線を三つ感じた。
ここは喜ぶところでは?!
書きたいけど原作追えてないから設定がわからん。
▼以下簡単なキャラ紹介
苗字女主
能力『重力原理』を有する学園都市第六位の超能力者。軽率なようでいて、その実隙がない。施設関連で何かと事件に巻き込まれている。
垣根帝督
幼少期にとある研究所で女主に出会っている。偶然実験内容を知り連れ出そうとしたが、頑丈な警備を前に能力制御ができず失敗。一人でいるときはよく女主を探している。ダイヤノイドで再会するも、すっかり忘れられていた模様。
清水澪(オリキャラ)
黒髪ショートの十歳児。「能力解析」の持ち主。原石解明や超能力者に至る最短経路発見などが期待される。そのせいでよく誘拐される。とんでもない方向音痴。
赤樫仁(オリキャラ)
茶髪のたれ目少年。澪のことが好き。ませてる。