ギャグ


 スリザリン寮監であるセブルス・スネイプは、ほぼ全てのグリフィンドール生から嫌われている。
 というのもグリフィンドールに対しての減点が露骨な一方、スリザリンにはお咎めなし、あまつさえちょっとのことで加点するからだ。特にグリフィンドールで英雄視されているウィーズリーに容赦がないため、反スネイプ心は募るばかり。

 女主は家族から予め聞いていたので気にならなかったが、確かにあの仏頂面は11歳に向けるものではないと思っていた。まあ、かと言ってスプラウト先生のような朗らかな笑みを浮かべられても鳥肌が止まらなくなるだろう。

 そんな訳でスネイプ先生はグリフィンドールにおける好感度が底辺と言っても過言ではないため、その信頼度も連動して低いのである。

「私達を嵌めようとしてるのよ!絶対そうだわ!」
「気が合うな、アンジェリーナ。俺も教科書とスネイプだったら教科書を信じるぞ」
「なあ女主、君のパパがスリザリン出身だからってあいつまで庇わなくていいんだぜ?」
「そうよ!だからその瓶を置いて!」

 アルマジロの胆汁を鍋に入れようとする女主の前に三人が立ち塞がる。
 正確にはアンジェリーナが鍋の前で通せんぼし、双子が両腕を掴んで鍋から遠ざけようとしてくる。

 全力を出せば解けるが、手の中にある瓶を握りつぶさないとも限らない。そうなったらスネイプ先生に罰則か減点を命じられるのは確実だ。

 ──どっちも嫌……だけど……!

「人間には引けない時があるの!」
「今は引いて!?」







 キッカケは調合中の様子を見回りに来たスネイプの何気ない一言だった。

「アルマジロの胆汁は10滴入れるように」

 これだけだったら皆ぶつくさ文句を言いながらも言う通りにしていたかもしれない。

 しかし今回はそれまでに「これで失敗した者は頭に綿でも詰まっているのだろう」や「グリフィンドールの諸君は魔法薬学に名声は不要だとミスター・ポッターに伝えなかったのかね?」といった嫌味皮肉が長々と続いていて、基本的に気が短いグリフィンドール生は見事プッツンしてしまったのだ。誰がアンタの言うことに従うか、と。

 確かに教科書には9滴と書いてあるが、ここはスネイプ先生が正しい。

 なぜ知っているのかといえば、魔法薬学が得意な家族に教え込まれたからだ。プロ級に料理がおいしい秘訣を聞いただけなのにいつのまにか助手扱いされ、おかげで一年生から魔法薬学の首位をキープしている。
 教科書が正しくないってどうなの?と思うが、個人の著書をそのまま採用しているために訂正できないのだろう。魔法省の怠慢とか思っても口にしない。女主は空気が読める女なのだ。

 そんな自称天才少女の女主は両腕の拘束が緩んだ瞬間に抜け出そうと時を待っていたものの、アンジェリーナ女王の命を受けたウィーズリーに隙はない。

「もう降参!仰せの通りにします!これでいい?」
「わかるのが遅いのよ。まあいいわ。二人とも、女主を離してあげて」
「そうだそうだ!か弱い女子を全力で掴むな!」

 手が離れてすぐにアンジェリーナの背後に回って抗議すると、ウィーズリーのどちらか(未だに見分けがつかない)が信じられないと言いたげに眉を寄せた。

「か弱い女子だって?聞いたか相棒」
「冗談はやめてくれよ、キメラの間違いだろ?」
「誰が危険度XXXXXだ」

 噂広めたのお前らか。後で血祭りにしてやる。
 女主は不屈の精神を滾らせた。

「きっとトロールだって殴り飛ばすぞ」
「クアッフルの代わりにトロールを使うって言い出すかもな」
「人間は地面でコブストーンでもやってろってか」
「「ああ怖い!」」
「人外扱いやめろ」

 あとフラグになりそうなこと言うな。あの校長なら「サプライズじゃよ」とか言ってトロール招いてもおかしくないんだから。
 しかしこれ以上騒ぐと黒いコウモリが飛んでくるかもしれない。女主は身を寄せ合うウィーズリーを軽く睨んで後は放置を決め込んだ。


後日談

「我が寮きっての秀才がいない!?探さねば!」

「ハーマニオニー返事してー!ハロウィンだよー!一緒にパーリナイしま、しょ…………」
「フゴッ?」

「だっ…………ダンブルドアぁぁぁぁあああああ!!! 」