!補足
・ギルガメッシュの個人神シャマシュに融合した女神がモチーフ。ここでは「ギルガメッシュの厚い信仰により男神から女神に戻ったことでシャマシュではなく女主を名乗るようになったが、口調に影響が残っている」という設定。
・背景→ギルガメッシュとエルキドゥと女主が自分の世界が剪定されたのでfgo時空のサーヴァントユニバースに逃避行して数千年自由に過ごしてたけど、地球の危機を視たギルガメッシュが「これだ!女主とエルキドゥに『汎人類史を守ったギルガメッシュすごい!カッコイイ!』と言わせてやろう!」とカルデアに協力して色々コメディチックにゲーティア打倒(異星の神はフルボッコ済み)。藤丸は神代並みの魔力が溢れるようになった現代に無事帰還し、サーヴァントは受肉して現代社会で働いたりサーヴァントのままだったり座に還ったりした。
サーヴァントユニバース──またの名を蒼輝銀河、あるいはサーヴァント界。そこは地上のサーヴァントと同じ容姿を持ちながら全く違う世界観に生きるサーヴァント達が跋扈するトンデモ時空である。
どれくらいぶっ飛んでいるかというと、刑務所に入れられたら脱獄し、死んだら適当にリスポーンし、致命傷になりうる攻撃をノリで回避するのだ。しかも今あげた例は一端に過ぎないといえば、その理不尽さが伝わるだろう。
地球に生まれ、理解を試みた者は口を揃えてこう言う。
──なるほど、わからん。
常識の通用しない、何でもアリな世界。
人はこれを「ギャグ時空」と呼ぶ。
そんなサーヴァントユニバースでも指折りのカオス集団が、日本のとある街に馬で来た。
*
サイドエフェクトとは、高いトリオン能力を持つ人間に稀に発現する超感覚である。トリオンが脳や感覚器官に影響することで発生するため、あくまで人間の能力の範疇を出ないが、どれも戦略次第で強力な武器となる。
現在ボーダーではS〜Cの4ランクで分類されているが、確認されているサイドエフェクト所有者は僅か6人と少なく、たとえCランクでも希少性は高い。
その中でも迅悠一が持つサイドエフェクトはSランクと最高峰の称号を得ている。彼のサイドエフェクトは未来予知。一度見た人物の未来を視る能力である。
しかし「未来がわかる」と言えば万能に聞こえるが、あまり使い勝手のいいものではないというのが実態だ。視える未来は可能性の分だけ存在し、無音映像であるため会話内容はわからない。しかも毎回確率の高い未来に進むとは限らず、バタフライエフェクトにより低確率な未来に向かう時もある。
とはいえ、これは能力だけの話だ。
数多くの未来から最善を選ぶ判断力。その未来を引き寄せる策略。そして何より、最悪を受け入れる覚悟。
これらを駆使することで迅は「未来予知」の価値を高めている。全ては来たるべき事態に備えるため、まだ見ぬ人物の運命を応援するためである。
──しかしギャグ時空にシリアスは通用しない。
「おいおい、嘘だろ……」
星が輝く夜空を見上げ、迅は顔を痙攣らせた。
あれは何だ!?飛行機か!流星か!いや馬だ!
ゆらゆらと不定形な炎ではあるが、確かに馬の形をしたナニカが橇を引きながら空を駆ける様子は、さながらサンタクロースのよう。
その正体はれっきとした戦車である。正史においてシャマシュが愛用していた太陽戦車。シャマシュはこの戦車に乗って朝日と共に東の地平線から昇り、全天を移動しつつ地上を照らしたとされている。その功績が認められ、戦車を引くブネネも征服王イスカンダルのブケファラスや騎士王アーサーのラムレイと同じく座に登録される運びとなった。
平行世界の女主と正史のシャマシュは性別も性格も異なるが、愛馬ブネネはどちらの世界においても仕事に忙しい主人の専属運転手を務めた。そして今日も幽閉塔から藤丸家まで主人とおまけを運ぶ予定だったのだが、謎の襲撃に遭い型月世界からズレてしまったのだった。これが初めてではないが、あまりの不甲斐なさにブネネは頭を抱えたくなった。
一方、迅は頭を抱えていた。家など簡単に丸呑みできてしまいそうな大きさの炎が空を移動する様子は隕石にしか見えない。その光景は朧げで穴だらけだった未来図と完全に一致していた。
だが嘆いている間も無情にも時は進んでいく。ついでに炎の馬も近づいてくる。こっちくんな。
しかし悲しきかな。願い虚しく、ブネネは沈黙した近界民の傍らに立つ迅の上空で止まった。
その時、携帯の着信音が鳴った。おそらくボーダー本部から見ていたのだろう。
「こちら実力派エリートです。どしたの忍田さ──」
『冗談は後にしてくれ!あの光は何だ!?』
「馬が燃えながら空飛んでる」
『は?』
簡潔かつ正確に伝えたが、返ってきたのは冷たい一音のみ。迅は普段の飄々とした態度を改めるべきかちょっと悩んだ。
「えっ」
それは迅が悩んだ一瞬より速かった。人ひとりでは対抗できない巨大な炎が、幻と言わんばかりにふっと消えたのだ。あまりにも不自然な現象に、迅は己の目を疑った。
そして乗っていたと思われる三名は足場を失うと、重力など感じさせない軽やかな音と共に着地した。
「人の気配がないね……ホラー映画の撮影かな?」
「映画……迫り来る魔獣を睥睨する女主──よし、決まりだな!」
「お前はいつも楽しそうだなぁ」
中性的な顔立ちで緑色の長髪を持ち、たおやかに微笑むエルキドゥ。暗闇でも輝かしい黄金の髪を持ち、次の企画について考えるギルガメッシュ。色素の薄い白金の髪を持ち、体操のお兄さん以上の爽やかさを放つ女主。
世界線レベルの問題児が上陸してしまった。
平行世界のギルガメッシュは従業員を抱え、サーヴァントユニバースだけでなく藤丸の世界にも数多くの娯楽施設を展開している社長である。
特に水族館・温泉・エステ・図書館なんでもござれの動物園「熱砂のオアシス」はTDRと同格の知名度があり、サーヴァントユニバースでも地上でも知らぬ者はいない。バカンスで行きたい場所ランキング(ダ・ヴィンチちゃん調べ)では創業以来不動の一位で、最近は「いい加減、殿堂入りしても良いのでは」という声も上がっている。と言っても、ニ位の「URK」もギルガメッシュの経営店だが。
そんな訳で、ついた二つ名が黄金大帝。彼の宝物庫には黄金の財宝が眠っていると噂され、サーヴァントユニバースでは日々ヴィランが盗もうと画策しては悉く失敗している。ゆえに謎の襲撃も異世界旅行も日常茶飯事な彼らは、三門市にお邪魔しても動揺しなかった。
だがお邪魔される方はそうはいかない。現に非凡な能力を持つ迅は次々と表れる可能性にひたすら困惑した。関わったら最後とんでもない世界に触れてしまう。しかし同時に、味方にすればボーダーの守りを確固たるものにできるとサイドエフェクトが告げている。
『支援は必要か?』
「いや。むしろ敵対されるかも」
忍田は心配なのだろう。隕石レベルの炎に突っ込まれれば、警戒区域どころか三門市全体が砂塵と化す。そうなれば住民は消え、スポンサーも撤退し、ボーダー解体と同時に近界民技術の漏洩や地球侵略が起こるだろう。
「よぉ、そこの人間!私達は暇つぶしに全宇宙に娯楽を届ける『過労反対戦線バビロニア』ってモンだ。よろしくな!」
そう言って女主は白い外套の内ポケットから名刺を取り出した。
聞き間違いかと思ったが、確かに名刺には「過労反対戦線バビロニア」と書かれている。暇つぶしという部分が引っかかるが、そういうホワイトな企業なのだろう、と迅は自分を納得させた。
ちなみに迅のあずかり知らぬことだが、この社名は第七特異点にてウルクの北壁についた呼び名「絶対魔獣戦線」に擬えてわざわざ改名したという経緯がある。
「えっと……女主さん達はこの世界に何しに来たの?」
「ほう。貴様も千里眼持ちか」
千里眼──この場合、未来・現在・過去を視る能力のことである。人理修復後も藤丸と共に在ることを選んだサーヴァントとしては、アーラシュが未来を見通す千里眼を有している。
未来視に限れば効果は似ているが、サーヴァントの千里眼は人体機能の延長線上にあるものでなく、ましてトリオン体の影響によるものでもない。迅のサイドエフェクトとは根幹が異なるスキルである。
「なに、ただの寄り道よ。ブネネの機嫌が直ればすぐに去る。旅の土産もあるのでな」
しかし土産と言う割に彼らの両手は塞がっていない。
それもその筈、魔術師から原始の宝具が眠ると称される宝物庫でも彼らにとってはただの荷物置き場である。そして迅は数ある可能性の一つ、「虚空から剣や槍を出現させるギルガメッシュ」を視ていたものの、武器以外も収納できる未来は視えていなかった。
「この星にコズミックドッグはいないのか?ブネネを励ますにはあれが一番なんだが……」
「こずみ……なんて?」
コズミックって宇宙とかそんな意味じゃなかったっけ、と頭の片隅で考える迅に、エルキドゥが女主の補足を伝える。
「コズミックドッグだよ。青灰色の毛を持つ犬で、血肉は栄養価が高くて味も絶品なんだ。でも人間は脆いからね、捕獲を試みても大抵噛み殺されてしまうんだ」
「こわっ!?そんな犬地球にいないと思うけど」
迅が知らないのも当然だ。コズミックドッグは型月世界におけるコズミック星発祥の魔獣であり、ボーダーがある世界線にいる筈がないのだから。
ちなみにコズミックドッグのしゃぶしゃぶ食べ放題ができるのは「熱砂のオアシス」だけである。
「じゃあそのひっくり返ってるのは?ブネネは雑種だからきっと食べてくれるよ」
「私の愛馬は残飯処理係じゃねーぞ?」
迅はさっきから出てくるブネネとは馬の形をした炎のことかと聞こうとしたが、ある未来がよぎって言葉を変えた。
「とりあえず、俺の拠点来る?」
城戸司令の命令か、三輪の独断か。いずれにせよ面倒かつ悲惨なことになるのは確実だった。
ギルガメッシュとエルキドゥには自由に馬鹿騒ぎしてほしい