梅雨を乗り越えて、暑い暑い七月になった。
その日も相変わらず蒸し暑かった。
『 え、母ちゃん? 』
『 実弥、玄弥。いつもありがとうね。父ちゃんがいない代わりにまだ子供の二人に頼っててごめんね。……名前、いつも家のことやってくれてありがとう。名前が下の子たちを率先して見てくれてるお陰で母ちゃんは仕事に行けるんだよ 』
『 きゅ、急にどうしたのお母さん? 』
『 ふふ、日頃のお礼 』
変なお母さん。
わたしたち上三人は眉を潜めてしまった。
『 名前と玄弥で行ってこい 』
『 え、…… 俺は兄ちゃんに頼りっぱなしで特に何も… 兄ちゃんと姉ちゃんで行ってこいよ 』
『 ええ、わたしだって家のことを当たり前にしているだけだしお兄ちゃんと玄弥二人で行っておいでよ 』
と、なんとも滑稽な会話を繰り広げる。見兼ねたお母さんが呆れた声で『 もう、三人で仲良く行っておいでって 』とわたしたちの肩を押しながら言うものだから、仕方なく半ば強引に追い出されてしまった形で家を出た。
下の子たちをおいてわたしたちだけ花火を見に行くなんて… いや花火は家の二階からでも見えることは見えるんだが…
なんて、うんうんと頭を抱えながらも右にお兄ちゃん、左に玄弥、真ん中にわたしと仲良く並んで街の方へ歩き出す。
『 お母さん、どうしたんだろう急に 』
『 さあな 』
『 花火なんて家からでも見えるのにな 』
『 あー、もしかしてお母さんが下の子たちと過ごす時間が欲しかったとか? 』
街に出て、それからまた少し歩いたところで、大きな音をたてた花火が夜空一杯に打ち上がった。
『 ……… 』
瞳いっぱいに映し出される花火。紅、黄、蒼、… 色とりどりな光が空を覆う。
あゝ、この世界はこんなにも綺麗だと言うの?
打ちあがる花火があまりにも綺麗で、呆然と眺めるしかなかった。夜空に満開に咲いた花火はその後一瞬で崩れ、儚く消える。