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「クラウス先輩、メリークリスマス、です!」
マフラーの裾を冬風に揺らして、無邪気に駆け寄ってきた後輩の姿に、思わずクラウスの頬が緩む。

「ナマエか。メリークリスマス」
毛足の長いマフラーに鼻先まで埋めたナマエの姿は、暖かそうだ。
少し街に出れば、雪化粧が施された街並みが白く輝く季節だ。
可能な限り、暖かい方が良いに決まっている。

「ハモン先輩が、ケーキを買ってきて下さったらしくて。クラウス先輩はどのケーキが良いですか?」
「ケーキか……。私はどれでも構わないから、オマエが先に選べばいい」

 途端、ナマエの表情がふにゃりと緩んだ。
その表情には、喜びだけでなく、ほんの少しの困惑も滲んで見える。

「それが……。ハモン先輩の選んで下さったケーキ、どれも美味しそうで、目移りしちゃうんです」
稚く微笑ましい悩みに、クラウスは吹き出さないようにする方が大変だった。

 確かに、ハモンの選んだケーキならば、どれもこれも一級品だろう。
目移りしてしまう気持ちも、分からないでもない。

「そうだな……。めぼしいケーキが食べられてしまう前に、私達もケーキを選びに行くか」
「はい!」

 ナマエの大きな瞳が、きらきらと輝いた。
ちょうど、王都の雑貨屋で飾られていたスノードームに似ている、無垢で幸福な輝きだ。

「ナマエ、少し良いだろうか」
「……クラウス先輩?」
大きな瞳が、ゆっくりと瞬いた。

 何も疑わない、信頼を宿したその双眸が愛おしくて、クラウスの胸が詰まる。
クラウスのローブの中で、包装紙がくしゃりと音を立てた。
慌てて包装紙に包まれたプレゼントを取り出して、クラウスはほっと安堵の息を吐いた。

 水色の包装紙には、小さなシワが走るばかりで、とりあえずは無事と言えそうだった。

「……遅くなってしまったが、プレゼントだ。メリークリスマス、ナマエ」
「え、私に……?」

 差し出されたプレゼントを受け取る手が、一瞬躊躇って、空中で静止する。
だが、指先を掠める金色のリボンの誘惑に負けて、ナマエはゆっくりと、プレゼントを手に取った。

「あの、開けてみても良いですか?」
「ああ、勿論だ」

 躊躇いがちな指先が、リボンを解いて、包装紙を丁寧に剥がしていく。
その下から現れた硬質な紙の手触りに、ナマエの瞳は再び輝き出した。

「これは……!」
「オマエの趣味に合うかは分からんが、これは私の好きな本でな。オマエにも、読んで欲しかった」
「……素敵な、本ですね」

 表紙を指先でなぞって、ナマエが口元を綻ばせる。
「次のお休みにでも、ゆっくり読んでみます」
「それは嬉しいな。読み終わったら、是非、感想を教えてくれ」
「はい、勿論です!」

 本を抱え満面の笑みを咲かせるナマエにつられて、クラウスもゆっくりと微笑んだ。
クラウスが何度も読み返した本に、新たな思い出が加わる日が、今から楽しみでならなかった。