Go to the West
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「なぁ、異世界から来たんだよな?えっと……なまえ……さん?」
「なまえでいいよ」
そう言ってなまえに話しかける猿こと悟空。
「ほんとか?じゃあさなまえ、なまえの世界には美味いもん一杯あった?」
悟空のその姿は猿というより寧ろ犬だ。なまえはそう思いながら苦笑した。
「お金があれば食べれない物なんて無いと思うけど」
その言葉を聞いた悟空は悲しそうに目を細めながら呟いた。
「……なまえは貧乏だったからそんなに痩せてんのか…?」
すると、それまで黙って聞いていた三人も、揃ってなまえに憐れみの目を向ける。
「確かにそれもあるけどね」
そう答えながら過去に思いを這せてしまったなまえは、バッグから煙草を取り出し火をつける。そしてゆっくりと肺に入れ、窓に視線を移しながら静かに吐き出した。
その一連の、たったこれだけの動作に、四人は何故か見とれてしまった。
しかしなまえはそれに気付きもせず、現状を整理する。
元の世界に未練は無いが、この世界にも現実感も無い故に執着出来ない。
かと言って四人に置いて行かれればきっとなまえは元の世界と同じ様に娼婦に成り下がるしかない。
なまえが知る生きる術はそれだけだったから。
14歳のあの頃から……。
「あの、聞いてもいいですか?貴方の事」
八戒がそう尋ねると、なまえは短くなった煙草を揉み消し軽く頷いた。
「貴方は医療器具…使えるんですか?」
「使えると言えば使えるかな」
なまえが答えるとそれに悟浄が質問で返す。
「じゃあ貧乏な医者だったとか?」
なまえは説明を渋っていた。その疑問には、なまえ自身の過去が関係しているから……。
「そんな洒落たもんじゃないよ……」
なまえは悪態ついて開き直る事しか出来なかった。
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