Genesis.R
――これは私の作戦なの。
そう彼女は不適に言い放ち去って行ったが、その時の俺は彼女が何を言っているのか解らなかった。しかし不本意にもその言葉の意味を理解した時、俺は溜め息ながらに笑ってしまった。
「ジェネシスー、本ばっかり読まないでよー」
そう言って俺の本を取り上げては勝ち誇った様な顔をし、慌ただしい任務から帰れば休む暇もなく彼女の相手をさせられる。
別に恋人同士という訳でも無いからこれと言って何をする訳でも無いのだが、とにかく彼女は俺から離れない。
「いい加減にしろ。周りから誤解されるだろう」
「嬉しいじゃない!」
彼女のそんな言葉に呆れつつも、結局いつも彼女のペースに引き込まれる。
「何故そんなに纏わりつくんだ?」
日頃からの疑問を投げかけた時、悪戯な笑みを浮かべた彼女が言った。
「ジェネシスが好きだからに決まってるじゃない。これは私の作戦なの」
そして立ち上がった彼女はドアの前へと歩き、ドアノブに手を掛けながら呟いた。
――今度はジェネシスが会いに来てね。
そんな彼女をゆっくりと閉まるドアの隙間から見送った。
これで一人の時間を堪能出来る。そう息をついた俺は愛読書に手を伸ばし、また明日になれば彼女に奪われるであろうこの一人の時間に身を預けた。
「こんなに静かなのは久しぶりだな」
思わず言葉が漏れた事に苦笑するも俺は本のページを捲る。しかし気付けば活字を追っていた視線はドアに向けられ、妙な違和感を感じてしまった俺は無意識の内に笑っていた。
「フッ、そういう事か……」
パタンと本を閉じ立ち上がり、一直線にドアへ向かう。失態とはまさにこの事だ。
溜め息混じりにドアを開ければ、勝ち誇った顔の君。
「ほら、やっぱり会いたくなったでしょ?」
「返す言葉が見つからないな」
だから、沢山のキスで君に返そう。