熱しやすくて冷めやすいと、いつからかそう呼ばれる様になった君だけど、俺から言わせてもらえばそれは前半部分しか合っていない。
──私、この里で一番軽い女なんだって。
もう何度目かの恋に破れた君が俺に向かってそう言うと、少し寂しそうな顔を手で覆う。
そしてその手を顎に持って行き、頬杖をつきながら溜め息を吐く。
「ねぇカカシ、好きな人に好きって言っちゃ駄目なの?ねー、カカシー!」
そう言ってグラスに手を掛け、口を尖らせて俺を見る。
「はいはい、愚痴は聞くけど絡まないでちょーだいネ」
俺は彼女の手からグラスを取り上げ、代わりに水を手渡した。
「あー!まだ飲むんだからっ!」
「いいから水にしておきなさい」
その時、不意に触れた彼女の手が酷く冷たくなっていて、それが今の彼女の心情を表しているようで不覚にも眉をひそめてしまった。
「……どうしたの?カカシの方こそ酔ってたりする?」
「酔っ払いのお前が言うな。ほら、そろそろ帰るぞ」
「やだ。まだ帰らない」
酒も入り、まるで子供の様に帰るのを拒む君を何とか店の外へと連れ出し、俺は君を送り届ける為に歩き出す。
彼女が恋に破れる度、彼女を支えながら彼女の家までの道のりを、早く彼女が吹っ切れるようにと祈りながら歩いて行く。
「やだー!まだ帰らないのー!」
「こら、明日も早いでしょ?早く帰らないと時間無くなっちゃうヨ?」
彼女が冷めやすいなんて誰が言うんだ。
──これから独りで泣くんでしょ?
そこへ一瞬だけ横切った風の冷たさに君は俯く。
「……知ってたの?」
「何となくだヨ」
きっと他のやつらなんて気付きやしない。俺だから気付いたんだと、思わず口にしそうになったけど、いつの間にか辿り着いた玄関先で君の背中を黙って押した。
「じゃ、また明日」
早々に背中を向け、今度は俺の家までの道のりを想いながら歩いて行く。
追い掛けるばかりの恋をしている、君を想いながらゆっくりと。