厚い雲に隠れた日が沈むと空は更にどんよりとし、任務を終えた私をより滅入らせる。
あぁ、今日も彼はやって来るのだ。にやけ顔でひょうひょうとしながら、我が物顔でやって来るのだ。
何度溜め息をついた事か。いや、溜め息なんて生易しいものじゃない。
私の気持ちを知っての事か、それとも私が歯が立たないのをいい事にやりたい放題好き勝手するのか。
なんといっても相手はあの男だと、毎日そう諦めては家へ帰る日々。
足取りは極めて重い。それでも玄関は目前で、私は祈りを込めてドアを開ける。
――どうかカカシが居ませんようにっ!!
我が家の様子を窺いながら入る家主は私くらいだろう。それでも窺わずには居られないのだ。
右を見て、左を見て……もう一回右っ!
「ほっ、今日は居ない」
そう安堵した私が玄関を潜る。しかし無情にも悪魔の声……。
「残念、上だヨ」
カモン!!ポリスマン!!
私は今日も不法侵入者を発見しました!
「本気でやめて下さい……」
私とは全く対照的な顔をしたカカシはスタスタとキッチンの方へ歩いて行く。
「お前ネ、任務が終わったならすぐ帰って来なさいヨ。お陰でお腹空きすぎちゃったでしょーヨ」
「知らないよっ!」
不法侵入者に文句を言われる理不尽さ。あなたには解らないでしょうね……。
私には一切構わず、カカシは躊躇いもせずに家の冷蔵庫を開けビールを取り出し、にっこり笑っては夕飯の準備をしろと無言で促す。
私の料理の腕はお世辞にも良いとは言えないのに、毎度毎度なんの嫌がらせなのかって思う。
「じゃ俺は米研ぎネ」
そしていつも決まってカカシがお米を研ぐ。これが不思議でしょうがない。
「ね、何でいつもお米だけはやってくれるの?」
するとカカシは口布越しに小さく笑い、驚くべき言葉を口にした。
「お前に俺の爪の垢を煎じてのませるたーめ」
「うわっ!!なんか汚いっ!!」
キッチンに並んで立っていた私は思わず体を仰け反らせたが、カカシは構わずお米を研ぐ。そして再び信じられない言葉を口にしたのだ。
「お前もネ、少しは一途な俺を見習いなさいヨ?」
カカシが笑った。だけどその時初めてカカシの笑顔が優しく映った。
「……喜んでいい?」
「大いにネ」
いつの間にか寄り添いながらキッチンに立ち、カカシと初めてキスをした。