ぱちり。数回瞬きをして辺りを見渡した。横を通り過ぎていく人は皆和服を身にまとっていて、着崩した制服を身に纏う私を不審な目で見る。
偶に見かける被り物をしたような生き物のおかげで、徐々に冷静になっていく思考回路。
そして決して早くはない頭をフル回転させて状況を把握するとともに、私のテンションは一気に振り切れた。
なんかわかんないけど銀魂の世界きたー!!
軽い足取りで向かう先はただ一つ。もしもこの世界に来たならば、やりたかったこと。なりたかったもの。それを叶えるために向かうのは真選組。
道はわからないが誰かに聞けばわかるだろう。私が今いる場所がかぶき町か、江戸なのかもわからないが。
もし違えば私の江戸への旅が始まるだけだ。
適当に道を曲がったり真っ直ぐ進んだりしていると、町の中心から離れたのか人気の少ない場所に出た。それでも真選組を目指し歩くことをやめることはない。
むしろなんだか目的地に近づいてきているような気さえしてくる。
「真選組さーん出ておいでー」
出ておいでと言われて出てくる人はいないだろう。けれど銀魂の世界ならありえるような気がする。だってなんでもありなんだから。関係ないことを紐付けさせながら、角を曲がる。
「ふべっ」
注意深く前を見て歩いていなかったからか、角を曲がって誰かにぶつかるというなんともベタなことをしてしまう。
ぶつかった人が怖い人なら一目散に逃げよう。そして大声で助けを呼ぼう。なんて考えながら、ぶつかった相手を見上げる。
「……っ!」
キレ目に瞳孔の開いた瞳が私を見下ろす。薄く開いた唇からは白い煙がゆらりゆらりと零れては消える。
黒を基調とした洋服に、胸元に目立つ白が栄える。
咥えていた煙草を細長い綺麗な指で挟んで、低く呻きのような声を出す。
――……ひ、ひ、
「土方しゃん!!」
あ、やっべ。噛んじゃった。