ボクの親友



「おや、レクスさん。先月は美味しいケーキ屋を教えていただき、ありがとうございました。ビルス様も気に入ってましたよ」
「お、レクスじゃん! 今日はこのゴテンクス様が遊び相手になってやるよ!」
「よぉっ、レクス! お前の活躍来てるぜ、すっげー頑張ってるって。でも、あんまり無理すんなよ?」

「キミって、色んな人から声をかけられるよね」

 フューの唐突な一言に、ペットボトルを口に付けたレクスはあっけにとられた表情をする。
 二人は荒地でエネルギー回収を行っていた。たまたまタイムパトロールの仕事がなかったため、フューの協力要請をレクスは引き受けた。指定された相手を倒し終わり、二人は岩に座りながら休憩していた。

「急に何だよ」
「顔が広いんだなーって思って」
「そうか?」
「そうだよ。歴史的有名人から悪人まで、様々な人と仲がいいよね」

 フューは前々から思っていたことを口に出す。
 コントン都で強くなるためには、自分の師を見つけ、技を伝授してもらうというのが通説だ。無論、ただ技を教えてもらえるはずがなく、師匠に技を教えるに値する人間かどうかもテストされる。
 レクスの観察をしていて、彼女は様々な師を仰ぎ技を教えてもらっていることに気づいた。同じ種族であったらクリリンから、最終的には破壊神との付き人兼師であるウィスや、中には孫悟空と戦った悪人たちにも指導してもらう姿も見かけた。
 レクスはペットボトルの水を飲み終え、口を離す。

「修行が終わった後でも交流させてもらってるからな。可愛がってもらえるのは、ありがたいよな」
「ふーん」
「……なんだよ?」
「別にー」

 フューは少し不機嫌そうに顔をそらす。レクスは怪訝そうな表情でフューを見つめる。
 レクスの交友関係についてなにか意見を言うつもりはない。彼女が強くなれば、エネルギー量も多くなり、様々な実験もできてフューの利益になり得るからだ。
 だが、フューの心には言葉にできない感情が渦巻いていた。レクスが先生と仰ぐ人間たちのほうが交流が長いこと知ってる、彼女が親しくしていることも。
 それがなんとなく面白くない。なぜそんな気持ちを抱くのはわからないが、どこか気に入らないという感情があった。

「フュー」

 声をかけられ、フューは我に返る。
 レクスは岩から立ち上がり、軽く背伸びをする。

「休憩も十分取れたし、そろそろ行こうぜ。後一戦だろ?」
「……ねぇ、親友」
「ん?」
「親友は、ボクをどう思ってる?」
「ただの知り合い」

 いつもの無表情できっぱりと言い放つ。何回も周回して会話しているのに、ただの知り合い扱いされたことにフューは抗議の込めた目でレクスを睨む。
 抗議を受け止めたのか、レクスは観念したかのように小さくため息をついた。

「冗談だ。三回ぐらいループして会ってるのに、ただの知り合いってのはねぇよ」
「じゃあ、どう思ってるの?」

 フューの言葉にレクスは数秒だけ沈黙する。軽く頭をかき、バツが悪そうな表情をしながらを顔をそらした。

「親友だと思ってるよ」

 フューは知っている。レクスは自分が照れるようなことを言う時、相手から目線をそらしたりする癖がある。それと同時に発言には決して嘘はなく本心からの言葉だということも。不器用な彼女の、本音。
  不思議な事に、フューの胸から先程の嫌な感情が消えた。代わりににどこかふわふわしたような不思議な気持ちに包まれた。(なんだろう、これ)フューは自分の胸に片手を当てる。

「これでいいか。満足したならもう行くぞ……フュー? 聞いてんのか」
「え? うん、そうだね。そろそろ行こうか」

 フューはレクスより先を歩き、ワープゲートへ飛んでいく。
 急に機嫌が良くなったフューにレクスは首を傾げたが、その後姿を追っていった。






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