精神年齢が一緒レベル



「フューさんはどうして意地悪するんっすかねー!!」
「意地悪なんてしてないよ〜」
「……」

 とある荒野、パラレルクエストに来ていたフューとアルスが向かい合いながら何かを言い争っていた。アルスは眉を吊り上げ怒った様子でフューを見上げながら睨み、フューは飄々とした笑顔で対応していた。リーダーであるレクスは腕を組みながら、どうでも良さげな目で二人の喧嘩を眺めている。
 喧嘩の発端となったのは、戦闘中のことだ。アルスが相手と戦い、最後の一撃を決めようとした瞬間、フューが横取りする形でとどめを刺した。
 必殺技をためていたにも関わらず、空振りしてしまったことがアルスの中で消化不良となってしまった。その事に対しアルスはフューに抗議をしたが、フューにどこ吹く風のような対応をされたから、アルスの怒りがヒートアップし今に至る。
 二人のやり取りを見ていたレクスが、制止する。

「アルス、少し落ち着け」
「けど先輩! フューさん私の獲物とっちゃったんですよ! 必殺技でかっこよく決めようとしたのに、邪魔されたんっすよ! まだ殴りたりなかったし!」
「お前が消化不良だってのはよーくわかった」
「ほーんと、後輩ちゃんはサイヤ人さながらのバトルマニアだよね。僕には理解出来ないや」
「インドア気取ってるくせにむっきむきの筋肉持ってるフューさんにだけは言われたかーねぇっす! 何っすかその筋肉、飾りっすか!?」
「僕が相手を実験するんだから、それなりに強くなきゃいけないからね。だいたい飾りとか言ってるけど、後輩ちゃん一度も僕に本気を出させた事ないでしょ」
「ぐぅぅっ!!」

 図星をつかれ、アルスは悔しさを顔に滲ませながらフューに強い眼差しを向けた。フューは勝ち誇った笑みを浮かべながらアルスを見下ろす。
 レクスはため息をつく。

「喧嘩するのは自由だが、時間もないし次の場所に移動するぞ」
「次の相手は誰?」
「確か、ターレスさんとラディッツさんだったな」

 怒っているアルスをよそに、フューはレクスと会話をする。その後ろで、アルスはフューを食い入るように見つめている。どうにか一泡吹かせてやりたいと言いたげな雰囲気を出していた。
 ふと、アルスは何かを思い出したような顔をする。何かを思いついたのか口で弧を描き、ニヤリと微笑んだ。その姿は悪事を思いついた悪人の表情だった。
 アルスはレクスと話し合っているフューに近づく。

「フューさん、フューさん」

 アルスは軽くフューの背中を叩く。
 不思議そうに、フューはアルスの方へと体を向ける。ニコニコと笑っているアルスを、不審そうに首を傾げた。

「何?」

 次の瞬間、アルスは右手を天に掲げ、左手を腰へと当て、右足へと重心を傾けた。
 傍から見ればダンスを踊る時のポーズだった。

「いくっすよ!」

 アルスが掛け声を上げた瞬間、フューもアルスと全く同じポーズをしたた。

「なっ!?」

 フューは驚いた顔をする。レクスは、これから何が起きるのか理解した様子でフューとアルスから少しだけ距離をとる。
 アルスが腰を振りながら右手を真っ直ぐ伸ばしかる軽く腰を左右に降ると、フューは左手を真っすぐ伸ばし同じ動作を始める

「ライト〜、ライト〜、レフト〜、レフト〜」

 二人は体を左右に動かしながら、上下に両腕を振っていく。始終笑顔のままのアルスに対して、フューは口元を引くつかせながら
踊っている。

「くるっとまわって、にっこりスマイル!」

 アルスは体を一回転させ、両手で人差し指を立てて頬へと当て、笑顔を作った。無論、フューもアルスと同じポーズを取らされた。
 ダンスが終わり、体が自由になったフューはアルスに叫んだ。

「ちょっと、何するのさ! いきなりダサイ踊りをさせて!」
「ふっふっふ〜。どうっすか、パンちゃん先生のダンシング・パラパラは! なかなかいい踊りでしょ?」
「どこが」
「ぶふっ」

 吹き出すような声が聞こえた。フューとアルスは声が聞こえた方向を見る。
 声の主はレクスであった。片手で口元を覆い、フューやアルスト目線を合わせないように別の方角を向いていた。

「……親友、今笑ったよね」 
「……笑ってねぇ」
「嘘! 思いっきり吹き出す声が聞こえたよ!」
「笑ったんじゃねーし、吹き出しただけだし」
「吹き出してるって言ってるじゃない!」
「はっはっはー! フューさん、先輩に笑われてやーんの! ざまーみろっす!」

 アルスはフューに指を指しながらゲラゲラと笑い始める。先程の意趣返しができたことで、怒りを発散したので満足したようだ。
 フューは額に青筋を浮かべながら笑みを浮かべる。

「後輩ちゃん、ちょっと新しい技思いついたんだけど君で試していいよね?」
「ぜってー嫌っすよ! やれるもんならやってみろーっす!」

 アルスは地面を蹴り、舞空術で空中へと舞い上がる。フューは追いかけるように地面を蹴り、超ダッシュを使ってアルスを追いかけ始める。
 取り残されたレクスは空中で戦う二人を見つめながら、軽く頭をかく。
 自分が止めても無駄だと思ったので、三分ほど好きにさせようと見守ることにした。






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