PM11:54、玄関の方からガチャリという音が聴こえたのを合図に、私は重く閉じかかっていた瞼をそっと上げた。ソファから腰を上げ、玄関へと向かう。そこには当然、玄関を開けたその主がいて、彼は私と同様今にも閉じそうな瞼を必死に開けて、眠いオーラを発信していて、つい笑ってしまう。あ、目閉じちゃった。

「おかえりなさい」

 コクリ、そう頷いた彼から持っている荷物をもらう。「シャワー浴びてくる?」「うん」「それじゃあ、ぱっぱと入ってきておいで」「わかった」「…お風呂で寝ちゃダメだよ」「わかった」本当にお風呂で寝ちゃいそうで、彼が浴室へ向かう背中を見て心配だなあ、と心の中でぼやいた。

 十数分後、彼はリビングへと戻ってきた。良かった、湯船で寝てなかった。彼はお風呂に入ってさっぱりした様子だったけど、眠気はやっぱり取れていないようで、ぽのぽのと歩きながらも意識が飛んでる。つい、笑みがこぼれた。「寝よっか」「うん」一言、また一言。私たちの会話なんて、本当にそれだけ。

 AM0:19、日付が変わった。一人で寝ることが比較的多いこのダブルベッドに、今日は彼と二人。隣に誰かがいるだけで、彼が隣にいるだけで、こんなにも心が温かい。「ねぇ、暁」「…なに」「いつもお疲れ様」すぐ目の前にある彼の頭をやさしく撫でる。「…いきなりどうしたの」目は瞑ったままで彼が私にそうたずねる。「いつも思っていることだよ」「そう」「眠いよね、もう寝ようか」今にも寝そうな彼が愛しくて、愛しくて、彼にくっついてしまう。「あつい」「えへへ、ごめん」「でも、」そのままでいい。うっすらと、彼の瞼が上がって瞳に捕われる。

「おやすみ、暁」
「うん」

 …おやすみ、名前。彼のその言葉だけで幸せになれる私は、単純だろうか。久しぶりに会えた、愛しい彼の「おやすみ」という言葉以上に幸せな言葉はあるだろうか。今日のこの日にちなんでお願い事をしよう。これからもずっと、ずっと、彼の隣で幸せ者でいれますように。

//160707 @七夕