さんさんめ

▼2021/03/11:がんちゃん

とにかく彼女は女優の何たるかを全て体現しているようだった。人当たりはいいが決して善人ではなく、人に媚びたり馴れ馴れしくすることもない。その人間として生きているかの如く役に入り、何事も無かったように彼女自身に戻る。女優という仕事をこなして、ごく普通の人間として生きている。いつだったか彼女のインタビュー記事を読んだことがあった。当たり前のように、女優という道を選んだ。そしてそれは特別なことではなく彼女にとって当然の道だったのだと語っていた。演技力だけでなく、彼女の整った顔や身体、全てが彼女を彼女として、女優に成らせるために与えられし、正に神からのギフト。才能だ。
彼女になにか特別な感情を持ったのは、自分も選ばれし人間と呼ばれた者であり、同じ舞台上にいる者として、それでも彼女の持つ光、オーラのようなものに目が眩んだからだ。
艶羨。それは恋と呼ぶには浅く、愛と呼ぶには穢れていた。



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