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それは暖かで穏やかな日和の日……。

一織くんと環くんは学校で、
三月さんはナギくんのお出かけ(秋葉原)について行き…
大和さんは陸くんと一緒に買い物に出かけた。

そもそもは大和さんのおかげで、僕は今日
寮に一人でいる。

「あー…なら陸は俺が面倒みるよ。気兼ねせずに2人でゆっくりしろよ。な?」

大和さん、ありがとう…なぜなら今日は……

玄関からチャイムの音がする、そろそろかな…?


「……いらっしゃい。奏……。」

「おっ…お邪魔します………。」

大学の時に出会った奏は、僕の初めての彼女。
僕がアイドルになると言った時、奏は泣きながら
「別れたくない!」と言ってくれた

「一緒に壮五の夢を追いかけたいよ!」

その言葉にどれだけ救われたか……。

夢でご飯は食べれないよ?と周りの友達に君が心配されてるの
僕は知ってるよ……。

それでも信じてくれる

そんな君が僕は大好きなんだ……。

だから、僕も信じてるよ…。

「あのぉー…今日、みなさんは?」

「みんな外出中だよ。どうして?」

「手ぶらではご無礼かと思って、お土産を……。王様プリンなんだけど。」

「本当に!?ありがとう!」

「え?そんなにプリン好きだったっけ?」

「あ、いや…メンバーにすごく好きな子がいるんだよ…僕の部屋入ってて。冷蔵庫に入れてくるから。」

「あ、うん…。」

よくよく考えた……。
2人なんだよな、今……。

こういう時ってどうしたら……。

とりあえず、飲み物とお菓子なのか?

無難なところだよね……。

お湯を注ごうとすると、僕のマグカップの中に何かメモが入っている。

なんだ?

『ソウヘ。お前さんこういうの疎いだろ?とりあえず2人っきりなんだからハメ外しちゃいなさい。』

メモの下には大きなチョコレート…?

「チョコが何か……?」

よくわからないまま、部屋に戻ると
奏はおとなしく、クッションを抱いたまま座って待っていた。

「ごめん、遅くなった…はい、紅茶でよかった?」

「あ、うん!ありがとう!……ねぇ?アイドルってどんな感じ?」

「え?そうだなー…まだデビューもしてないし、これと言っては……。」

「…そっか、よかった………。」

「どうして?」

「壮五の事は応援したいの。歌ってるときの壮五は楽しそうだから…でも、ファンができたら……私以外にも壮五の事好きになっちゃう人…出てくるんだよね…。」

久しぶりにみた顔は驚くほどか弱くて…
僕の知っている笑顔じゃなかった。

どうしたら、僕の中で君が一番だって伝わる…?

どうしたら…どうしたら……。

「あ、そうだ…奏、これ。」

「え?何それ…?」

「うちのリーダーがくれたんだよ。チョコ食べる?……確かチョコにはリラックス効果があるんだ。ヨーロッパなんかでは寝る前に食べる人もいるくらいだよ。」

「へ、へぇー……じゃあ……。」

あー…これ絶対、不満そうな顔してる……。

チョコでごまかされたみたいな顔してる……。

「んっ…これチョコの固まり…大きいね……。」

一生懸命、口の中で大粒のチョコを転がそうとしている奏は
可愛くて……つい見惚れてしまった。

「壮五?壮五!………チョコってね…恋に落ちた感覚になるって、知ってた?」

「へ!?」

「……私はもう、壮五の事大好きだけどね。…それに、キスしてる時よりも4倍くらい脳がときめき感じるんだって……。この状態で壮五の唇、私が奪ったらどうなるかな?」

「え!?ちょ…んっ………っ。」

あぁ…かっこ悪いな……
僕からリードもできなくて……

「ふぁぁっ…、壮五……好きだよ……。」

「んっ…知ってるよ…。僕も大好きだから…。」

そうだよ…ちゃんと言葉で伝えないと…

「奏…。確かにデビューすればファンも出来ると思う…でも。僕が生涯で愛するのは奏だけだから……。」

「ふふっ…その言葉、待ってた……。」

「欲しがりだな。」

「もっと欲しい……。」

「お望み通りに…。」

大きなチョコは溶けるまで
僕らの口内を行き来した。

チョコが溶けきる前に

僕の方が奏の熱で溶けてしまいそうだ。


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