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神奈川県横浜市伊勢佐木異人町。
江原明弘の一件を終えて以降、徐々に日常が戻っている。
暖かな日の光と、眠たくなるような気温に春の訪れを感じつつ、
僕は事務所の食料を買うために街を歩いていた。

「すみません〜!ちょっといいですか?」

振り返ると、比較的ラフな格好をした女性がいた。

「それって僕のこと?」

「そうそう!今、友達の飼ってる猫ちゃん探してて…!」

「猫?」

「そう!フユちゃんって言って、こんな感じの子なんだけど…見てないですか?」

女性は自身のスマホ画面を僕に見せる。画面上には、赤い首輪を付けた真っ白な可愛らしい猫の写真がある。

「う〜ん、悪いけど見てないな…。いなくなったのっていつ?」

「3時間くらい前です。換気しようとして窓開けたら逃げ出しちゃったらしくて、慌てて外に出たけどその時には姿が見えなくなってたって。今その娘も別の場所で必死になって探してます。」

どうやら猫のフユちゃんは臆病な性格で、あまり外で活発に動き回る感じではないらしい。
しかし、いなくなってから3時間となるとかなり広い範囲で探す必要がありそうだ。

「もし良かったら、探すの手伝おうか?」

「え?でも予定とか大丈夫です?」

「大丈夫!それに僕一応、探偵やっててさ。そういう依頼にはうってつけじゃない?」

僕がそう言うと、彼女はしばらく考えたあとで爽やかに笑みを浮かべてこう言った。

「じゃあ、お願いしちゃおうかな!」

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