フユちゃん脱走事件の翌日、私はいつも通りの格好で異人町を歩いていた。
依頼された仕事が予想以上に早く終わり、暇になったので少し街を散策しようと思ったのだ。
しかし、大人しくそのまま帰れば良かったと、次の瞬間に思うことになる。
「よお〜、姉ちゃん。暇そうだなあ…」
男の声を無視して通り過ぎようとしたが、そこに男達が立ち塞がった。
誰だこいつらと思ったが、よく見ると見覚えがある。この間、喧嘩しているのを成敗したゴロツキ達だ。
「…私に何か用?」
「何か用、だと?ゴラァ!この間は勝負の邪魔してくれやがって…このままで済むと思ってんのか!!!」
「私は依頼があったから喧嘩を止めたまで。大体、街のど真ん中で勝負とか迷惑すぎる。通報されなかっただけマシじゃない?」
「何だとゴラァ!まぐれで勝ったからって調子に乗りやがって、ぶっ殺してやる!!行け!お前ら!!!」
男の一声で男達全員が殴りかかってくる。
顔面に向けて飛んできた拳を避け、背負い投げた。それに巻き込まれる形で、他の男たちも倒れていく。
「見た目の割には軽いのね」
「んだと!この!」
挑発に乗った男は起き上がった勢いで突っ込んできた。私は自身の足を後ろに払い、その勢いを利用し逆に男を組み伏せる。そのまま締め技で肩の関節を外してやった。
「あがぁッ…!」
男は苦悶の表情を浮かべる。良心は痛むが、こちらとて怪我はしたくない。
その後も次々と襲いかかってくる男達の攻撃を躱しながら、蹴りや殴りを交えてそいつらの関節を外していく。
一通り倒したところで、最初に声をかけてきた男の不自然な様子に気づいた。右手にはナイフが握られている。
「やるじゃねえか…。そんじゃあこいつで殺してやらあ!!」
これじゃあ流石に無傷は無理かな…。
「死ねやあああッ!!!」
男はそう言いながら突っ込んでくる。躱すのに集中しようとした途端、男は横に吹っ飛んだ。
「…え?」
目前には白い仮面をつけた男が立っていた。それにより、男が吹っ飛んだ原因は彼であると気づいた。
「大丈〜夫?」
この声は…。私がそう考えていると、ナイフを持っていた男が起き上がった。男の顔には青あざが出来ている。
「あれ〜?意識あったんだ。結構いいのが入ったと思ったんだけど」
「て、てめえ…、何しやがる!!」
「それはこっちのセリフじゃない?女の子に刃物向けるなんて、男として恥ずかしくないの?」
「そんなやつは女じゃねえ!!蛇みたいに動きやがって…」
「…口の利き方もなってないみたいだね。もっとお仕置きが必要かな?」
次の瞬間、男の体は後方へ再び吹っ飛んだ。
「ぐおはァッ…!!」
先ほどと同様に、綺麗な飛び蹴りが男の顔面に決まり、その男は気絶した。