胸がドキドキするのは好きだからよ、と堀ちゃんが言う。
その言葉に掴んでいたトマトが箸からするりと抜けて再び弁当箱へ入った。
いつもどおりの生徒会室でのご飯。
女子会と称されたそれだから男子はいない。
ユキちゃんが私の右で、桜が左、レミちゃんは堀ちゃんの横でそれぞれ大フィーバー。
「な、ななななにを!?」
「いやだから、あんたが柳「まてまてまて!!!」何よ」
なんで知ってるの!!と詰め寄ると桜にバレバレよ、と言われた。
「ほ、本人は!?」
「気づいてるのは男子だと石川だけよ」
「透って馬鹿なのにね」
石川が馬鹿なのはもういい。
どうでもいいんだ。
確かに私は柳くんの前ではわりとあたふたしちゃうし声はでかくなるし真っ赤になるけれど。
ここまでとは思っていなかったからなんとなくショックだった。
「ねーえー、堀さーん」
「あ、もういいわよ」
ぞろぞろと入ってきた男子軍。
女子会は元々十分程度で終わらせるつもりだったので遅めに来てくれたってわけだ。
にやにやする女子軍に居心地の悪さを感じる。
助けを求めるためにここは井浦だ、と顔を上げると柳くんと隣に座っていて、何故かにやりと笑われた。
え、やな予感。
「名前こっち座りなよ、明音が聞きたいことあるって」
「っ井浦くん!」
「っへ!?」
かぶったのは私と柳くんの言葉。
焦ったように静止の声をあげる柳くんとは対照的にしてやったりな顔をする井浦にいらっときた。
周りのみんなは井浦ナイスみたいな雰囲気だけど、余計なお世話だしお前なんで知ってるの!
「苗字さん、お好きなところで食べていただいてよろしいので…」
真っ赤な柳くん。
そしてニヤニヤとする面々。
なんとなく、なんとなくだ。
ヘタレた私だけれど少しの勇気を振り絞って、周りの全員の度肝ぶち抜いてやろうと思って、
「井浦、席チェンジ」
と、言ってみた。
心なしか嬉しそうな柳くんに心臓が高鳴るのは、堀ちゃん、何ででしたっけ?