ジュー、キュッ、パコン、キュルルルルゥゥ。飲んでいたパックが不規則に変な音をたてた。凹んでしまったパックジュースを片手にん?と今しがた目に付いてしまった光景をガン見する。

(な、な、なんですかあれぇ〜〜〜!!)
(うわぁ〜なんだろうねぇーあれ〜〜〜)

それも当事者のチームメイトと共に。





その日は訓練がある日だった。簡単な射撃訓練だから終わるのは早い。その後ランク戦にでも行ってみようか、などと鼻歌交じりに意気揚々と右手に鎮座するフレッシュピーチと書かれたパックジュースをチューチューと貪る。んー、程好い甘さや。

(んー、ランク戦行けばいずみん先輩かよねやん先輩居るやろか、あ、諏訪さんとこに行くんも有りやなぁ〜。)

訓練後は任務も入ってない。ようは暇なのだ。誰に構ってもらおうか、今度はどんな悪戯をしようか、などと画策しながらその道を歩く。そんな時だった。影浦隊隊室に向かっていたゾエさんとばったり遭遇したのは。

「あ、ゾエさんや〜」
「あれ?野菊ちゃんだ」

おはよー、これから訓練?そですよー、ゾエさんはランク戦ですか?いや〜ゾエさんはこれから任務なんだよー。さよですかぁ、それはそれは乙ですなぁー。あはは、だねぇー。

なんて、なんともゆるゆるな会話が繰り広げられる。そんな和やかムードの中に一つの叫びが飛び込んできた。それが全ての元凶であった。まあああああくうううううんんん!!!と女の子の声。何事かと向けた視線の先には見知った、だが呼び名に違和感がばりばり残る黒い人が。

「あ、あれって」
「うん。カゲだね」

そして冒頭に戻る。




同い年かそれよりほん少し年下の女の子に抱きつかれ挙げ句の果てに泣かせている(ように見える)先輩に面白いものを見たとニヤニヤが隠しきれない。隠してどうする。これは最早スクープだ。誰にも言いふらさないなんて、有り得ない!なんて使命感ぽく言ってみるけどそもそもただの悪戯心なので小さく拳を作り決意表明、ではなくニヤニヤと笑いが隠しきれていない口元を両手で覆い隠しながらぴょんぴょん跳ねていた。

「なんスか、なんスか、あっれはー!」
「野菊ちゃん楽しそうだね」

そうですね!楽しいっすわ!高らかとそう返したい衝動を抑え、騒がしいご一行を見守る姿勢に入る。

見知らぬ女の子に泣かれながら抱きつかれているカゲ先輩は本当に鬱陶しそうにしているけど本気で剥がしにかかっていないように見えない。嫌々ながらも手加減だけはしているんやね。そして逆に、そんな暴れる女の子を引き剥がしにかかってはるこっちは知っいてる女の先輩。あれ、なんで玉狛の人が居るんやろう。

「私の方が好きだって言ったじゃない!」「………………えー、野菊ちゃん?」(じー)「えーっと、ねぇ?」(じーー)「…………。」(じーーー)「…………………。」(じーーーー)「………………ちょっとカゲさんその女誰なのよ」「あなたこそ誰よ!まーくんは私のなんだから!」

キラキラと期待に満ちた瞳で見つめられれば逸らすこともできず、少しの間にらみ合いが続く。しかし、それも根負けした北添の降参で終了の合図が訪れる。それから暫く、そのどうでもいい茶番は影浦の任務時間が近くなるまで続くのであった。

「あ、行ってもうた」
「それじゃゾエさんも行くね〜。野菊ちゃん、からかうのも程々にね〜」
「善処しますわー、またねゾエさーん」

もうストローからはフルーツの香りはしなかった。


18.6.13