また「×××」で逢いましょう

 どこで選択を間違えたんだろう。
 すべてがスローモーションに見えた。俺以外の生物は死に絶え、時間が止まってしまったようだ。本当はその逆だというのに。
 走馬灯は、脳が活性化されて処理量が増加することによって起こる現象らしい。危機的状況を回避するための防衛反応とも言われているが、さすがにこの状況では俺の脳は死を回避するプランを弾き出すことはできないだろう。
 ライから奪った銃を逆手で持ち、トリガーには親指がかかっている。銃口は俺の胸ポケットを突いている。
 音のない世界で、何度も考える。
 失敗した俺のできる最善がこれだ。俺の命は尽きても、被害は最小にとどまる。
 後悔がないとは言えない。彼女に別れを告げてから数年、すべてが終わって迎えに行くことばかり考えていた。他の人のものになる前に、と。
 冷たく長い夜を、彼女のあたたかな笑顔を思い出して耐えてきた。写真がなくたって忘れるはずない。
 彼女も俺を待ってくれている。俺が潜入捜査官になったあと、彼女の様子を見守ってくれていたゼロはそう教えてくれた。なのに、すべてが終わったあとで俺の死を伝えられるなんてあんまりだ。
 幸せにすると誓ったのに。
 心が凍える。こんな最期になってから、果たせなかった約束をいくつも思い出す。
 俺は、悔恨を断ち切るように悴む両手に力を込めた。
 ――もし、もう一度、はじめからやり直せるなら今度は絶対に、
 止まっていた時間は再び動き出す。
 ズドンッ――

ヒトリヨガリ