「深津くん」
「…ん」
私の意中の彼は名前を呼んでも振り返らずにてきとうな返事だけしてくる。その態度からわかる、私が眼中にないってこと。だから名前を呼んだはいいものの、この後に言葉をつなげるのを躊躇してしまう。こっちを見て、私を好きと言って、愛して、帰らないで、どうしたらあなたの一番になれる?、どの言葉もきっと彼を困らせるだけ。
「…ん、なんでもない。気をつけて帰ってね。」
たまに猫のようにふらっと現れては私をしつこいくらいに抱いて、そのあとはだるそうに服を着てなんの未練もなく帰っていく。本当は知ってる、深津くんに本命の女の子がいること。
それすらも次第に愛に思えてくる。