犬という動物は散歩をしなければならない。両親が躾けた私の助けをするゴールデンレトリーバーのレオが部屋にはいるが昨日のあれから痺れは少し取れたものの未だに痺れるもんだから実家に連絡を取りしばらくの間預けることにした。レオの他に白猫の白玉もいるが白玉は老婆で散歩も必要が無いので部屋に置いておくことにした。レオはまだ若いからか離れるのが少し嫌そうだった。

 預けて1ヶ月ほど経てば前の生活ができなくはないほどに回復したのでレオを戻してもらった。両親には部屋で躓いて転んだと言ってあったから今度は気を付けるようにと何度も念押しされて別れた。散歩を1ヶ月もしていなかったから自分の仕事は呆れるほど暇な時間で終わってしまって新たな仕事を増やしていたくらいだったので久しぶりに散歩へと赴いた。
 さすが躾が行き届いてるだけあってレオは気を遣って走ることなくこれでもかと言うほどのんびりと歩いていた。白玉も一緒なので少し歩きづらいが外の空気は何とも言えないくらい清々しかった。外に出ることは嫌いだが空気を感じたり人々の会話が耳を通り抜けることは好きな方。近所の公園に着くと適当なベンチに腰を掛けた。平日の日中にも拘らず子連れが多く小さな子どもたちが多くそれをぼんやりと眺めていた。

 いつまでぼーっとしてたのか子どもたちは減り、ちらほらお弁当を広げてる団体もいた。もうそんな時間なのかと思うがうつらうつらする眠気のまま帰る気にはなれないでいた。またぼーっとしてたら記憶の隅に眠ったものが呼び起された。

「あの!」

 考えるが先か動くが先か、記憶が正しと勝手に判断されつい声をかけてしまった。その人は驚いた顔をしていたが向こうも気付いたのか軽く頭を下げられた。

「眼鏡ありがとうございました。無事元通りになりました。」

 そう報告するとその人は安堵した顔を見せそうですかと言った。伏せていた白玉とレオを立たせ彼と少しばかり開いた距離を歩いて詰めた。

「脚も良くなったみたいですね。」

「…そう、ですね。以前よりかは随分。」

 少し、何言か話した時にやっとお互いの名前を知った。彼、荒木さんのような人とは話すことがない人生だったが意外な収穫をした気分だった。そのままの流れで連絡先まで知り、荒木さんは用があるからそこで別れた。
 これが私の人生を変える人だなんて誰が知っただろうか。
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