チケット

 韓国でドラマの撮影が立て込み休み無く過ごしていた数ヶ月で気が付けばもう7月に入っていた。一週間もしないうちに璃央の誕生日じゃないかと焦るが日本に戻れる時間はなく今年も会ってお祝いができるのは遅くなるなんだと悲しくも思えた。
 軽くショックを受けながら、もう夜も更け裕大と住んでいる家に帰ると電気が点いていた。こんな時間まで起きていなんて珍しいけどもしかしたら消し忘れたのかもと思い急いで部屋に入った。

「おかえり」
「起きてたの?」
「うん。姉さんにプレゼントがあって」

 プレゼント?と頭を悩ました。誕生日はまだ先の話だし、これといって祝われるようなことは起きていない。そもそも起きても祝われることがない。

「6日1本仕事が終わったらそこから1日オフっていうプレゼントです。」
「えっ?どういうこと?」
「6日はマリオの誕生日だろ。その日にあいつが今出てる舞台の夜公演チケ取れてさ、前後を日本での仕事入れてもらった。3日間は日本なんだけど」

 頭の中はパニックで真っ白だった。

「会えはしないけど……、まぁ、そういうことです。」
「そういうことって……」

 手を取られ一枚のチケットが乗せられた。公演日は確かに6日と記されていた。

「いや〜マジ頑張ったんだから。俺がマリオのファンだからって言ったらスタッフとかも協力してくれて。まぁ俺だけが当たったんだけど。」
「裕大、ありがとう。嬉しいです。」

 きっとこれはサプライズなんだろう。ずっと一緒のマネージャーもきっとグルで、嘘のスケジュールを教えていたんだろうなと簡単に予想がついた。
 ずっと好きでやっと付き合えても日本と韓国じゃ会うことも連絡を取ることも難しい上に特殊な職業。このことを知ってるのはマネージャーと社長くらいで向こうもそんな感じ。裕大にすら隠して付き合ってるなんて心苦しいことはない。でも好きという気持ちは知っているからこういうサプライズをしてくれたんだってわかる。

「ごめんね、裕大。」
「ん、何か言った?」
「ううん。何も言ってないよ。楽しみだね。」

 そうだなと裕大は言うともう寝るわと自室に行った。未だに手にあるチケットを無くさないように大切な書類が入っているところへ仕舞った。嬉しくて浮かれそうな気持を抑え次までの仕事に備えシャワーを浴び着替えてまた家を後にした。ほんの少し頑張ればご褒美があるとわかった私はいつも以上に精が出た。
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