Call out



毎日毎日、耳にタコができる。
「宍戸おおおおおおおおお好きいいいいいい」
「っだあああああ、るっせー!!」
苗字は今日も俺のところへ来る。
まったく懲りないやつだ。
「宍戸はあたしの事嫌いなんだね…」
「いや、そうじゃねーけどよ」
「あたしは大好きだあああ宍戸おおおおおおおおお」
ああああうっせーうっせー!

「なにやってんだー?」
岳人が廊下からひょっこり顔を出した。
苗字がうるさくて聞こえたんだろう。
「あ!岳人!」
「ちょっと助けてくれ、コイツまた…」
「なんだ、またやってんのかよ」
岳人は笑って苗字を見る。
他人事かよ…。
「邪魔しないでよ?」
苗字も苗字で何故か対抗意識を燃やしてるみたいだ。
二人して俺の苦労をまるでわかってねーな。
宍戸、宍戸と何度も呼ばれてその度に反応して…。
好きなのはわかったから、考える時間とかをだな…。

「そういやなんで“亮”って名前で呼ばねえの?好きなのに。」
一頻り笑い終えた岳人が苗字に問いただす。
「ん?」
対して苗字は顔を背ける。
「なに顔赤くしてんだよ?あんだけ言ってて…」
「え?」
頬を押さえて隠してるつもりなのか、今度は目が泳いでる。
「…お?なんかコイツ反応おもしれえぞ」
「は?」
とうとう顔を手で覆ってしゃがみ込んじまった。
「ほら、名前で呼んでみろって。“亮”って」
「いや…あの、」
「いーから呼んでみ」
なんだか虐めてるみたいで俺は複雑な心境だ。
岳人が詰め寄って、観念したのか小さく呟いた。
「………り…りょ……」
「苗字?」
「りょ………っ、無理だあああああああああ!」
「はぁ??」

「仕方ないじゃん!恥ずかしいんだもん!」
ようやく立ち上がり顔を上げた苗字は真っ赤になって講義した。
「何でだよ、俺の事は『岳人』って呼んでんだろ!」
「まぁ、岳人はなんか平気…」
「じゃあ跡部は?」
「景吾。うん、普通に…」
「鳳は?」
「長太郎」
「樺地とか…」
「宗弘だっけ?」
「…んで、宍戸は?」
「りょ……お…」
「ぎこちねーなー!」
また岳人が腹を抱えて笑う。
苗字もまた恥ずかしいのか怒ってるのか耳まで赤くしてる。
「あーもー!…っ亮!す、好き…だ」
「おっ、おう…」
「名前呼ぶのにどんだけかかってんだよ!」
涙目でまっすぐ俺を見る。
不覚にも心臓が跳ねちまった。
「だって恥ずかしいじゃない!本当に好きなんだもん!本気なんだもん!」
「…おう」
「うわあああああ!」
言いたいことだけ言って、叫んで教室を出て行く。
「苗字って、いつもあんなだったら可愛いのにな」
「宍戸、苗字のこと好きなのか?」
やめとけ、と言う岳人に何も返さない。
俺だってなんであんなのがいいのかわかんねーんだから。