
私は、跡部が好きだった。
跡部もたぶん、私が好きだった。
跡部景吾は完璧な存在だった。
財閥の御曹司で、みんなの注目の的で、何ひとつ欠けていなかった。
かたや私は一般家庭の娘。
結ばれはしないはずだと、わかってた。
いつかこんな日がくるんだろうと思ってた。
それなのに別れを告げられた時は、その場で立ち尽くして何も言えなかった。
金縛りにあったかのように動けない…まるで氷の世界。
とても驚いていた。
私は跡部の事を全然わかってなかった。
財閥の御曹司で、みんなの注目の的で…。
完璧で、人気者で、そういうスタイルで生きているんだと思ってた。
…ねぇ跡部。
あれから、どれくらい経ったのかな。
あの時の、凍りついた時間。
今も鮮明に思い出せる。
「名前が俺を愛してくれた事が、俺の自信になる」
思いもしなかった。
私が跡部にできる事なんて、ないと思ってた。
今でもこの言葉は離れないでいる。
もっとちゃんと跡部を見ればよかった。
もっとちゃんと跡部を理解したかった。
何を考えて、どう生きていくのか見ていたかった。
手を伸ばしてももう、届かない。
後戻りなんてできないから。
でもきっと、私はまだ跡部のことが…