
カフェテリアはいつもより騒がしく、女子の声が大半を占めていた。
「やれやれ…今年も大変そうだね、跡部のヤツ」
親友である彼女がテーブルにもたれるようにして項垂れ、溜め息混じりに呟いた。
景吾は相変わらず忙しそうで、私の相手なんかしてられない。
「…もう慣れたわ」
「ホントに?あたしには無理だわ…嫌じゃないけど不安になる…」
そう小さく言葉を零しているのを横目にその彼を見ると、景吾とほぼ同じような状態で少し納得した。
「でもちゃんと渡したんでしょう?」
視線を戻し訊ねると、頬が赤みを帯びていくのがわかる。
「あら、その様子じゃ…何かあったのね?」
「あ…あたしのことより!名前はどうすんのよ…」
さっきから私たちがいる事に気づいていながら、気にしないフリをする景吾を睨みつけるように見る。
「色々と計算してはいるんだけどね…ファンが多くて多くて」
あんなにたくさんいるとどうしても近づけないし、景吾もソレを望まないだろうし。
あのファンの多さは…異常じゃない?
「まぁ、部外者目線だとキャーキャーしてて楽しそうだよね」
「言いたい事はよくわかるけど…」
今はみんなチョコのことしか頭にないのかしら。
「どうせ有名ブランド店で買った高いチョコが多いんだろうな…」
「…案外手作りも多いのよ」
中にはいかにも料理初心者の焦げたようなチョコだってあるの。
湯煎しているチョコにお湯が入ってしまったのか、妙な固まり方をしているチョコもあったわね…。
「へぇ、なるほどねー……って、なんでそんなこと知ってんの?」
「誰が景吾のホワイトデーリスト作るの手伝ってると思う?」
「…うわぁ」
物凄く嫌そうな顔をしてみせる親友がおもしろくて、自然と笑ってしまう。
だってそうすれば誰が景吾にどんな想いを抱いてるか、ちゃんと把握できるじゃない?
変な話題で盛り上がってる最中に、私の携帯が震える。
「まさかの景吾からメールだわ」
「ウソ、あの状況下でメール?跡部ヤバいな…」
それほど私を想ってくれてる、って解釈したい。
そして、ぶっきらぼうな文面に優しさを隠して思いやってくれる。
いつもそうだ、私は景吾に…揺り動かされる。
「"名前の、期待して待ってるぜ"、だって」
だから、いつでもいいから、ちゃんと渡しに来いよ、って…書いてなくてもそうわかる。
想いはちゃんと届いてたのね…。
とっても、甘い想いを込めて贈るわ。
「まったく、人の気も知らないで…女の子に囲まれちゃって…」
「名前、名前?言ってる言葉と裏腹に頬緩んでるよ」