「祭だー!!!」
イヤッホウ!名前は切島と二人で地元の神社で催される夏祭りに来ていた。
つい先日、教室で机に突っ伏した名前は、唐突に「夏祭りに行きたい!!!」と叫び出したのに、乗ったのが切島だったのだ。
そして、折角だからお互い浴衣を着ようという具合に話が進み、今日に至る。
待ち合わせ時、少し遅れてやってきた見慣れない浴衣姿の名前に少々心をときめかせた切島だったが、彼女のいつもの調子に変な意味でホッとする事になる。
(やっぱ、どんな服着てても名前は変わらないな。)
そう考える切島。もちろん、いい意味で。
普段からサバサバとさっぱりした性格の名前に対して、変に気負わなくていい…、そういう意味で安心していた。
「ねー!切島!何処回る!?」
「そうだな、名前はどうしたい?」
「祭りって言ったら屋台でしょ!!」
一応、この地域の祭りでは大きい方で、二十時には1000発を超える花火が上がる。
それが目玉のイベントなのだが、それには目もくれない彼女に対して切島は微笑んだ。
「んじゃ、適当に屋台回るか!」
「おうよー!」
ブラっと二人で屋台を回る。
まぁ物の見事にわたあめ、金魚すくい、りんご飴など女子が好みそうなものには食いつかず、輪投げだとかストラックアウトだとか、まぁ所謂男子受けするものに片っ端から食いついていた。
が、あれいいこれいいと言うだけで、やるとは言わない。
そんな名前が、ある屋台の前で完全に足を止めた。
「射的…?」
「切島!!!勝負しよう!」
「お?」
「射的でどれだけポイント稼げるか!」
名前の手には既に五百円玉が握られている事に気付いた切島は苦笑い。
付き合ってやりますか…、と自分の財布から五百円玉を出す。
それを見た名前は、目を爛々と輝かせた。
「あれな、負けた方が焼きそば奢りな」
「乗ったあああ!」
的屋のおっちゃんに、五百円玉を渡す。
おっちゃんに手渡されたコルクの弾丸を詰めて、的に狙いを定める二人。
パンッと軽快な音を立てて、コルクの弾は的に命中。
二人とも見事に的に命中させたが、切島の方は落とすに足らず。
「やりぃ!わたし、一点取った!」
そもそも、射的で的に命中させること自体難しかったりするのだが、この二人…侮れねぇ…、と屋台のおっちゃんは目を光らせる。
弾の装弾数は六発。
軽い景品であればあるほど点数は低い。逆も然り。
名前は、着実に軽いもので低い点数を重ねていく算段。
対する切島は、高得点一点絞りの一発逆転を狙っている様だった。
「だぁあ!やっぱ、高得点は落ちねぇわ!」
「ねね!もっかいやろー!」
「今度は何奢らせるつもりだよ?」
「ラムネ!」
「それを奢ることになんのは名前だぞー?」
「負けないし!」
余程、射的が気に入ったのか、はたまた切島に奢らせる為なのか…、しかし、切島も負けたままにしておくわけにもいかないと二戦目の申し出を受けて立つ。
二戦目の五百円玉を、的屋のおっちゃんに支払った時…
-ヒュー……ドンッ-…パラパラ…
「あー、花火始まっちまったな」
ふと、隣を見ると真剣に的を狙う名前
。
花火よりも射的な名前を見て切島は、あぁ、コイツはこうだからいいんだよな。
そう思い、切島も的を狙った。
「はい!俺の勝ちー!!」
「ええええ!切島!あんなのズルいよ!!」
一発逆転の大物を見事に落とす事に成功した切島は、二戦合わせても名前が到底太刀打ち出来ない点数を獲得していた。
「ホラ、やるよ!」
その超高得点の大物は、そこそこの大きさのテディベア。
それを、ズイと突き出す切島。
「えっ」
「お前、これ欲しかったんだろ?最初狙ってやめたの知ってるぜ?」
「それはっ…得点取りたかっただけというか…なんというか…」
ごにょごにょ口篭る名前に、切島は目を細めた。
「それに…、似合わないでしょ!?わたしに…、くまのぬいぐるみなんて…」
「そうか?俺はそうは思ってないけどな。」
名前に向かって差し出される虚空を掴むくまの腕。
首元には切島の髪と同じ色のリボンが巻かれたそれを、名前は見詰めた。
「俺が名前にプレゼントしたいんだよ。受け取ってくれ。」
眩いまでの笑顔を向ける切島にああ、本当にこの人には敵わない。
名前は、そう心の中で呟いてくまの腕を取った。