奇跡の一枚


「轟焦凍氏。わたしは、アナタとゲームセンターなるものに行きたいっ!」
「いや、いいけど。どうした。」

放課後、二人きりの帰り道。
所謂放課後デートに洒落こもうといったところ、わたしが行きたい場所の指定をする。
アッサリOKしてくれた事に嬉しく思うも、なんか勢いで変なテンションになった事に羞恥心を覚えた。
顔を抑えてわたわたしていると、焦凍くんはわたしの手を取って歩き出した。

「ほら、行くんだろ?」

本当は人の多い所とか騒がしい所とかあまり好きじゃ無いはずなのに…、彼の優しさが素直に嬉しい。
そもそもどうしてわたしが、ゲームセンターに彼を誘ったかと言うと実は理由がある。
先日、他校の友達と一緒にカフェでお茶する機会があった。
そこで自分達の彼氏自慢が始まって恋バナに花が咲いた…のはいいのだけど、みんなスマホやら手帳やらに彼氏との“プリクラ”が貼られていてそれがとても羨ましく感じてしまったのがきっかけだった。
焦凍くんとのツーショットの写真すら持っていない事に少しばかりの劣等感。
だから、自然な形でゲームセンターまで二人で足を運んで自然な形でプリクラ機の中に入って自然な形で彼とのプリクラをゲットしようと考えていたのだけど、もう出鼻から不自然さ満載でこれは転けたかもしれないと少しばかり落ち込んだ。
でも、嫌な顔一つしない彼に少しくらいは期待してもいいのかもしれない。

「ほら。こんな所に来るって事は何か理由があるんだろ?」

わたしたちは駅前の大きなゲームセンターに足を運んだ。
暫く店内をプラプラ歩いていると、彼からそんな一言が。
彼はわたしの事などお見通しの様で、わたしの顔を軽く覗き込んで首を傾げている。

「あのねっ…」
「…?言ってみろよ。」
「わたし、焦凍くんとプリクラ撮りたいの…っ!」

プリ…クラ…?と更に首を傾げる焦凍くんに、天然さんめ…可愛いよあなた…なんて心の中で思う。
プリクラとは、プリント倶楽部の略称で今や商標名として“プリクラ”が定着している。
デジタルカメラとプリンターの複合機で、その場で写真シールを印刷してくれるというスグレモノ。
今のプリクラは機能性能が発達して、可愛く盛ってくれるというから更に凄い!
軽く、焦凍くんに機械の説明をしたところこれまたアッサリOKを貰えた。
もうそれが嬉しくて嬉しくて堪らない。

「ココにね、カメラがあるの!フレームはどうする?」
「よくわかんねぇから、任せる。」

そう言って柔らかく笑う彼。
ああ、来てよかった。
何枚か写真を撮った後、落書きコーナーに移動してわたしが色々と落書きをする。
途中、焦凍くんはまじまじと画面を見詰め、こんな事も出来るんだな…と、呟いていた。
そして、全行程を終え、シール取り出し口からシールが印刷される。
それを手に取り綺麗に二等分して、片方を彼に渡した。

「ありがとう。大事にする。」

暫くシールを見詰めていた彼がこんな事を言うもんだから、わたしは嬉しくてしょうがなかった。
それに、念願の彼氏とのプリクラ。これで、友達にわたしも自慢できるんだなって思うとずっと抱えてたちっぽけな劣等感は影も形もなくなってしまう。

でもね、もっと嬉しいのはその翌日から彼の携帯にその一枚が貼られてる事なんだけど、彼には言わないでおくことにするよ。