狙い撃ち
「あれ、上鳴じゃんか」
「お、苗字!」
学校の帰りにゲームセンターに寄ったら、クラスメイトの上鳴がいた。
「ひとり?ってか、ぼっち?」
「そういう言い方辛くなるからやめて!?つか、お前もだろーが!」
それは確かにそうだけど、と呟いて言うのを辞める。
私の好きなゲームは、あんまり、女友達とやるようなものじゃないから。
「なんだ、お前もこういうの好きなのか?」
「お前”も”…ってことは、上鳴も?」
目の前には、デモンストレーションが流れている、大きなモニター。
その手前にサブマシンガンがセットされていて、これがこのゲームのコントローラー。
施設からの脱出を目標とした、よくある設定のガンシューティングゲームだ。
「私はひとりで帰る時によくやってるけど…」
大量にゾンビの出るゲームなんて、女子はあんまりやらないだろう。
私もクラスの女子の前ではやらないし。
「んじゃあ共闘しようぜ苗字!二人プレイなら助け合いできるし」
「え、い…いいけど」
二人で一枚ずつコインを入れると、画面に映る血痕と共にタイトルロゴが浮かび上がる。
うめき声が聞こえて、大きな扉の前で男女二人のキャラクターが銃を取り出した。
それに合わせるように私もコントローラーのサブマシンガンもどきを構える。
「行くぜ!」
「うん!」
慣れた様子で迫り来る敵をどんどん倒していく。
上鳴も相当プレイしているようで、敵の頭を確実に狙い撃ち抜いている。
ストーリーが進み、ゾンビの群れから逃げる途中、上鳴が消火栓ボックスを撃った。
「っし!回復アイテムゲット!」
「え、そんなんあんの?」
「おぉ、この次のドラム缶撃ってみ」
「う、うん」
上鳴に言われるがままドラム缶を狙うと、それが破裂する。
その爆発に巻き込まれて、ゾンビたちが倒れていくのは圧巻だった。
「一掃した…」
「ナイス!」
がしがし頭を撫でられて、驚いて彼を見上げる。
画面の光が反射する彼の横顔に見入っていると、ゲームから聞こえた叫び声にハッとする。
いつの間にかボス面に移っていて、慌ててコントローラーを画面へ向けた。
「んじゃ、地球を救うとすっか!」
「…ふ、そうだね!」
上鳴の言葉に苦笑を漏らしつつ、地下水路を進むとボスが壁を壊して襲いかかってくる。
通路を塞ぐほどの巨体に4本の腕、動きこそ遅いものの一発の攻撃力が強い。
掴みかかってくる攻撃に逃れながら、なんとか銃弾を打ち込んでいく。
「いったぁ!」
巨大な手に叩きつけられて、ゲームなのに咄嗟に痛いと声を上げてしまう。
「こんの…」
上鳴が弱点へ手榴弾を投げ込むと、巨大な体は地面へと崩れ落ちる。
AAと表示されたリザルト画面に思わず、おお…と声が出た。
「やるね、上鳴」
「…お前もやるじゃねーか、相棒!」
上鳴が手を上げて、自然と私も手が上がって。
ウェーイ!と、いつもの調子で言う彼とハイタッチをした。
「案外俺らいいコンビかもな!」
上鳴がニッと歯を見せて笑って、心臓が跳ねる。
ドキドキと自分の鼓動の音が聞こえるくらいにうるさいのはなんでだろう。
きっとこのゲームのせいだな…。