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「っ、謝れ、よっ!!」
「仲間だと思ってたのは、俺らだけだったのかよ…!」
「テメェが守護者だなんて吐き気がするぜ! ボンゴレから消えろ!!」
痛い、痛い、痛い…。こうして殴られるのももう何回目だろうか。数えるのも億劫になって途中からやめたのに、ちょっと気になった事に笑えた。
それが気に食わなかったのか、ツナや山本、獄寺は鬼のような形相で更に私を痛めつけた。
仲間だと思ってた? 私だって、仲間だと思ってたよ。なのにあなた達はずっと一緒にいた私よりもあの子を信じたんでしょう? 何もやっていないと、声を枯らして叫んだ私よりも、声を高くして涙を流しながら縋り付いてきたあの子を。
「いっ…!」
“この時代”に来たのは、いつだっただろうか。歳を取らない私は、外見なんて変わるわけもなくずうっと同じ時を生きてきた。そんな時に私を見つけて、暖かく包んでくれたのは今やボンゴレの初代と称えられているジョット達だった。
あの日も彼らとのんびり過ごしていた筈なのに、気づいたらこの時代にいたのだ。そうしてボンゴレX世のツナ達に出逢い、ジョット達の時と同じく守護者になった。
「もうやだ…帰りたい、帰りたいよ…みんな…!」
涙は流れない、けれど、確かに心が泣いていた。
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「そんな、全部嘘…?」
「演技って、どういうことなのな…!」
「そのままの意味。というより全部その目で見たじゃない。あの子の本性」
冷たく突き放す私にツナ達の顔は強張っていく。今までの自分たちの行いの過ちにやっと気づいたのだろう。そんな彼らをハッと鼻で笑って、復讐者に連れてかれたあの女を見やる。
涙でぐしゃぐしゃの顔は化粧もどろどろで、まあ酷いことになっていた。叫び声は聞いたもんじゃない。――そして、女はいなくなった。
「…光の守護者は、いつどんな時もその灯りで大空を照らしなさい。それが、光の守護者に与えられたもの」
ツナ達しかいない体育館に、私の声が響く。
「ここに来たばかりの頃は何もわからなくて路頭に迷ってた私を見つけてくれたのが、ツナ達だった」
「ここにって……並盛のこと?」
ツナの問いかけに私はふんわりと微笑むだけ。それは、私の話を全部聞いた後にわかるはずだから。
「初めは見た目がそっくりなツナ達を見て、ホッとしたの。夢だったのかって。でも違った。ここは、ジョット達がいたところじゃないんだって」
紡がれた真実に、ツナ達は信じられないとでも言いたげに目を見開いた。そりゃあ信じられないよね。私がタイムスリップしてきたなんて。
「最初は信じてた。ジョットの子孫ならちゃんと真実を見極めてくれるって。でも違った」
「そっそれは……!」
「確かに俺らが悪かった。けどそれでもテメェが十代目を貶していい理由にはなんねぇ!!」
「ボスの右腕なら! …ボスの間違いにいち早く気づいて道を正さないといけないんじゃなかったの…? 少なくとも私の知ってる右腕は、そんな馬鹿じゃなかったよ」
帰りたい、みんなの元に。私が忠誠を誓ったのは彼らじゃない。彼らよりも強い信念と絆で結ばれた、暖かなオレンジ色の貴方なんだよ。
ああもう、ジョット達の前でしか泣かないって約束したのに。涙が止まらない。でも褒めてくれるよね?泣き虫な私が今日まで一度も泣かなかったんだよ?
ぺしゃりと膝を地面につけて手で顔を覆う。すると、声を上げて泣く私の頭にふわりと誰かの手が触れた。
――誰かなんて、顔を見るまでもない。
「っ、う、そ……」
だって、だって。その手のひらは、ずっと渇望していたものだから。
「ジョット……!」
涙で滲む目で見上げた先には、ホッとしたように頬を緩めた私のボスがいた。ぎゅうっと私をその腕の中に閉じ込めて、私の存在を確かめるように温もりを共有する。
「ジョット、ジョット…!」
「なまえ………なまえ…っ…」
お互いに名前を呼び合い、縋り付く。そんな私たちをツナ達は呆然と見ている事しか出来なかった。
「どうして、ここに…?」
「これが、俺となまえを繋いでくれたんだ」
「写真…? これ、私とジョットが初めて撮った時の……」
「そうだ。これの裏に文字が書かれてあったんだ。それを読んだらこの建物の外にいたんだ」
まさか、こんなものが私とジョットを繋いでくれたのか。あり得ないと言いたげな私にジョットがクスクスとおかしそうに笑ってまだ瞳に溜まったままだった雫をその綺麗な人差し指で拭った。
ああもう、全てがどうでもよくなった。
「じょ、っと…!」
「…よく、頑張ったな…なまえ」
「っ…ん、」
あったかい、あったかい。
「帰ろう、俺たちの家に。仲間の元に」
「うん…っ!」
「待てよ! なまえ、お前何言ってんだよ!? お前は俺たちの守護者だろうが!!」
「…先に裏切ったのは貴方達だよ。それに悪いけど、私の忠誠はプリーモに誓っているの」
吠える獄寺を一瞥し、最後に綱吉を見やる。今にも泣きそうなその顔に、私は罪悪感も後悔さえもなかった。
「ボンゴレ、潰さないでね」
ギュッとジョットの手を握り、二人で顔を見合わせる。こくりと互いに頷いて、ジョットが此方に来た原因である言葉をそっと呟いた。
瞬間、ぐるりと視界が一回転したかと思えば、見慣れた部屋のベッドに二人してダイブしていた。
写真の裏の裏の裏
「なまえ」
「ん?」
「──おかえり」
「……うん、ただいま」
さあ、もうすぐ仲間達がやってくる。そんな光景を想像して、私は久しぶりに声を上げて笑った。
『Together at any time』
いつでも一緒に