何がしたかったのか訳が分からなくなったけどとりあえず供養で投げておきます

















「簡単な思考実験をしよう。」


三日月のように湾曲に歪んだ口元からそう言葉が漏れる。いつだって思考の読めない表情に、感情の機微を隠した糸目の彼に懐疑心を抱きながら話の先を促す。


「最初に言った通り、これは簡単な思考実験さ。まぁそう気を揉まずに応えてくれ給え。」


彼はそう言葉を切り、両掌をこれからマジックをはじめるかのように見せ付けてから自身の背後に回す。


「今掌の中には小鳥、無いしまぁ掌に収まるレベルの小動物が居る。


―さて、この小動物は死んでいるでしょうか?生きているでしょうか?」


なんだその問題は。猫が小動物に変わっただけで、まるっきりシュレーディンガーの猫じゃないか。『考えられる答えは一つ。掌の中を見て見ないと分からない。』


「―――って君は答えるだろうけど、ここではひとつどちらか一方、白黒ハッキリ、1か0かで応えて貰おうか。


先程君が言ったように、答えは掌の中を確認しなければ分からない。今現在は生きている状態と死んでいる状態その両方が同時に存在している。


さぁ、掌の中の小動物は死んでいるでしょうか、生きているでしょうか?」


答えると言っても、後出しジャンケンのように答えを変えられてしまえば、絶対に当たることの無い問題だが、彼は『答え』ではなく『応え』と言っている。つまり彼にとってこの問題の成否は特に関係無い、のだろうか?


「君が危惧しているような、後出しジャンケンの様な君が応えたら、殺したり殺すのをやめたりして回答を変更したりするつもりは一切無いよ。


私は私の中で確実にこれだという答えをもって、君の応えを受け入れるつもりだから安心したまえ。


まぁ言ってしまえば君は理屈、屁理屈、倫理観、正義心を持って私を納得させるのか、それとも私の中の答えを見つけるのかそのどちらかという事さ。」


そうは言うが、白か黒か、1か0かと言われてしまえばきちんとした答えを当てたくなってしまうのが人の性ではないだろうか?


僅かに歪んだ口元に、彼は愉快そうに笑みを深める。


「言っただろ?これは簡単な思考実験さ。矛盾思考思考の果てに明確な答えなど有りはしない。君が導き出した応えこそ、唯一無二の価値ある答えさ。


でも、ひとつつけ加えておくとするのならば、私は『とんでもない捻くれ者』という事は抑えておいて欲しいところだね。」


さて、お世辞にも答えと応えに直結していなさそうなヒントを貰い今一度この問題について考えてみるとしよう。


出題された問題は何の変哲もないシュレーディンガーの猫。生きている猫と死んでいる猫が同時に存在しているという矛盾した状況。


本来の答えは『箱を開けてみるまでは分からない。』だが、今回は生きているか死んでいるかの二者択一のどちらかを選ばなくてはならない。この時、私が選んだ答えの真逆の答えを彼が答えることは無く、彼の中ではどちらかが既に選ばれている。


また回答をする際に、どちらか一方が当たり、ということは無くあくまで出題者である彼に応え無くてはならない。彼が求めている答え。


道徳的な思考からしていけば、命を奪うということはたとえ例えばなしであったとしても、忌避するべきことであるから掌の中の小動物は生きている。と言う回答になるだろう。


しかし、彼は最後に自分は『捻くれ者』であると答えている。この答えは応えとしては合っていても彼の答えでは無いだろう。


最初に彼は空っぽの手のひらを見せてきた。手のひらの中に何も無いのならば『居ない』、存在しないと同じ。存在しないものは生きてはいないから小動物は死んでいる。


ひねくれている、と言うよりは屁理屈に近いが、どうだろうか?


「そうか、そうか。それが君の応えか。うんうん、いいと思うよ。矛盾問題には明確な答えはないからね。君が出した答えが正しい答えさ。


ん?私?私の答えはね、『生きている』だよ。何故そうなるかって?ふふふ、だって私は一言も私の掌の中に小動物が『居る』とは言っていないからね。それに君も言ったように最初私は空っぽの手のひらを見せただろ?


初めから居ないものは殺せない。故に小動物は生きている。屁理屈だって?あぁ屁理屈さ。


なんたって私は捻くれ者だからね」