_______________どうかこの剣を、湖の妖精に還して来て欲しい…


霞む視界の端で静かに息を呑む彼に、自らの剣を差し出す。


彼は何度か逡巡した後、震える手で私の剣を受け取った。


______あぁ、これでやっと眠れる。


静かに瞼を閉じ、風が木々の隙間を通り過ぎる音に耳を澄ませる。


先程まで盛んに聞こえていた鉄と鉄のぶつかり合う甲高い音に、人か獣かもわからぬ咆哮はどうやらここまで届かないらしい。


ゆっくりと落ちていく思考の縁にざくり、と草木を踏み締める音が届く。


_______剣は…?


ただ一言そう問いかければ、彼はかすかに息をつめながら湖に還したと告げた。


_______________どうか、剣は湖の妖精に還して欲しい。卿に酷な事をお願いしていることはわかる。だか、しかし、その剣を湖の妖精に…


そう彼に告げれば、しばらく押し黙っていた彼は再びその脚を動かし、私のそばを離れた。


あぁ、彼は最後まで私を信じ、慕い着いてきてくれたのに何と酷な願いをしてしまったことか…


幾ばくかの心苦しさを感じながら、閉じていた瞼を開きゆるりと瞬きをする。


木々の葉の隙間からこぼれる柔らかな日差しに目を細めながら、自身の汚れた手を眺める。


身に付けていた鎧は血と油に塗れ、神聖な森の中で自身だけが異端であると静かに主張していた。


____王よ…


震える声で呼ばれ視線を持ち上げれば、隻腕に輝く剣を抱えた彼がそこに膝を着き崩れ落ちていた。その表情は今にも泣きだしそうに歪み、言葉を紡ぐ度に目に見えぬ血を吐くかのように苦々しい。


_______________ベディヴィエール卿……


________『命令だ』その剣を湖の妖精に返還せよ。


______________________________承知、いたしました…我が王よ……


彼はそう告げ、何かを振り切るような、性急な音をたてながら私に背を向け駆け出した。


恐らく今度こそ彼は、剣を湖の妖精に還しに行くのだろう。


理想のために己を殺し、王という権能となった私は王妃を悲嘆に暮れさせ、騎士達に疎まれ、民達に畏れられ、振り返ってみれば、私のそばに最後までいてくれたのは、最後まで忠誠を誓ってくれたのは、彼だけだった。


そんな彼の忠誠にわたしは応えることが出来たのだろうか?


彼が誇れる王であっただろうか?


彼が支える程の王であれただろうか?


そんな取り留めのない____今となっては確認のしようもない疑問が泡沫ように浮かんでは消えた。


しばらくの間、こたえのない問を浮かばせていると、不意に声が掛けられる。私は知らず知らずのうちに閉ざしていた瞼を持ち上げ視線を投げる。視線を投げた先には、私の剣を持たぬ彼が立っていた。


彼は穏やかに、しかし泣きそうな顔をしながら、私のそばに片膝を着く。


_______________王よ。王の剣を湖の妖精にお還し致しました。


そう告げる声は微かに震えながら、しかしやりきったという充足感に満ちていた。私は彼のその言葉を聞き、余り力の入らない片手を上げ彼の頬に添える。


「忠誠大義であった…」


緩やかに自身の口角が上がるのを感じながら私はゆっくりと眠りに落ちた。


最期に、「王よ…どうか、あなたの次の夢が安らかなものでありますように…」と言う優しい祈りを聴いた気がする。





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穏やかな風が頬を撫でながら草木を揺らしていく。


その様子をぼんやりと眺めながら先程まで見ていた夢を___前世を思い起こす。


ベディヴィエール卿が私の剣___聖剣エクスカリバーを湖の妖精に返還したおかげにより、私は第2の人生を前世の記憶を引き継ぎ送っている。


正直、前世の記憶は別に必要無かったとは思うのだが、あって困ると言うことは無いため特に問題視はしていない。


むしろ前世よりも社会的にも科学的にも発達した今世は遠い未来のおとぎ話の中に居るようでとても楽しい。


中でも今いるLINKVRAINSは仮想現実とは思えないくらいに現実を忠実に再現している。


物に当たれば痛みを感じ、水に触れれば冷たさを感じ、風が頬を撫でれば心地良さを感じる。


そんな現実よりも現実らしい仮想現実を楽しんでいる傍ら、今私の頭を非常に悩ませている問題がある。それは今世の世界の主軸となっているものである。


今世は前世と違い剣や魔法や武力などと言った血なまぐさいものはほとんど無く、とあるカードゲームで全てが帰結すると言っても過言ではない世界なのである。


このカードゲームはこの世界においてそのデッキを持っていなければ住民登録もままならない都市があるほどこの世界においての比重は大きい。


そんな世界の命運すらそのカードゲームで決まってしまいそうな勢いのあるレベルで世界の主軸となっているカードゲームこそ「デュエルモンスターズ」である。かく言うこのLINKVRAINSにログインする際にもデジタル媒体か紙媒体のデッキが必要と言うレベルと浸透っぷりである。


さらに言えば、悪者がなにか悪事を働く様を一般人に見咎められた場合、物理でどうのこうのではなく、このように


「ハノイの騎士と出会ってしまったのが貴様の運の尽きだ!!


さぁ!決闘で貴様を痛めつけてやろう!!」


決闘を仕掛けられるのである。しかし目と目があったら決闘とは、目と目が合ったらポケモンバトル!みたいな感じがする。


「ふふふ、怖気付いたか!!」


少しばかり思考が逸れていると、白のフードを被り、顔半分を仮面で覆ったハノイの騎士と名乗る人物がデュエルデスクを構えながら高圧的に話す。


なぜこの世界の人は、相手が必ず決闘に応じると思い込んでいるのか…あぁ、そう言えばハノイの騎士との決闘は逃げられないのだったか。


私は深いため息を吐き、ハノイの騎士との決闘に応じる為にデュエルデスクを構えようとした時、


「見つけたぞ!ハノイの騎士!!」


我々の頭上から、若い男の声が降ってきた。


視線をハノイの騎士からそちらに向ければ、意志の強そうなエメラルドグリーンの瞳にモスグリーンを主としたライダースーツに身を包み、ライディングデュエル用と思われるボードに乗った青年が私の隣に降り立った。


ハノイの騎士はその青年を視界に入れると苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ彼のアカウント名を叫ぶ。


「き、貴様はplaymaker!!


また我々ハノイの騎士の邪魔をしに来たのか!!」


「あぁ、貴様達には吐いてもらわなくてはならない事があるからな!」


playmakerと呼ばれた青年は好戦的にデュエルデスクを構え、ハノイの騎士との決闘を始めようとするが私はそれに待ったをかける。playmakerは一瞬驚いたようにエメラルドグリーンの眼を見開くが直ぐに不服そうに目を細める。


「なんだお前。」


「好戦的なところ申し訳ない、playmaker、さん?


あのハノイの騎士は私の相手なのでな。少し待ってもらえるだろうか?」


言葉と共に肩口から視線を投げれば、まだ何か言いたそうに口を開閉してから、傍観する事に決めたのか一二歩後ろに下がりplaymakerは腕を組んだ。


その様子に感謝を述べてから、私は再びハノイの騎士と向かい合う。


彼にハノイの騎士との決闘を譲っても問題は無かったのだが売られた喧嘩は、買わなくては騎士の名折れだ。私はデュエルデスクを構え直しハノイの騎士に自らのアカウント名を告げた。


「我が名はArthur。このデッキにかけて、貴公の挑戦に応えよう」







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この後遊作に「(彼もまたLOST事件の被害者なのでは?!」って言う勘違いから「共に戦わないか?」って聞かれる。


夜神翼
前世がアーサー王なためアカウント名もArthurにしている。
デッキは聖遺物か聖騎士デッキのイメージ。
史実とFg0の中間。いいとこ取りともいう

容姿
現実 黒髪 蒼穹の眼
LV 金髪 蒼穹の眼
アバターの衣装的にはFg0のエミヤの初期衣装風なアルトリアの初期衣装。
ドレスの所がエミヤの腰布見たくなって中にエミヤの黒ズボン履いてる感じのイメージ


閑話休題
YGOの世界にポケモンはない?あなたのクリアランスにはその情報は開示されてません。(めそらし)


本来書く予定だった設定


アヴァロンは遠く

理想郷に至れなかった王様の話。

ディオ寄り(オチではない)

聖剣を泉の精霊に返しその一生を終えたはずなのに聖剣(鞘付き)と聖槍(変更あり)をその身に宿して転生したただのアーサー王。

聖剣のお陰で青年の姿のまま年を取ることもなく、無限に生き続けるだけのお話。