窓越しの密事
彼女の部屋の窓は、向かいのマンションと向かい合っていた。
決まって木曜日の夜、午後8時を過ぎると、向かいの夫婦の部屋には、妻ではない別の女性が姿を見せる。
その日の彼女は、いつもと同じように、椅子に腰掛けてその光景を待っていた。
部屋のカーテンは、彼らの激情を隠すように半分だけ閉められている。
その隙間から見えるのは、ぼんやりとしたランプの明かり。
今日、男が連れ込んだ愛人は、透き通るような白い肌をしていた。
二人は、窓に手を着き、まるで夜景を眺めるかのように佇んでいる。
しかし、その背後から男の腰がリズミカルに、そして激しく動き出すと、愛人の身体は、その度に揺れ、窓に張り付いた手がわずかに震えた。
彼女は、自分が覗き見ているという、いけないことをしている自覚をはっきりと持っていた。
でも、もうやめることはできない。
カーテンの隙間から漏れる、二人の行為を捉えるたび、彼女の胸の奥から、抑えきれない衝動が湧き上がってくるのを感じた。
愛人は、男に胸を揉まれると、その艶やかな表情を歪ませ、吐息を漏らしているようだった。
それを見た彼女は、知らず知らずのうちに、自分の胸元に手を伸ばしていた。
男が愛人の胸の突起の根元を執拗に優しく触れると、彼女もまた、自分の胸の膨らみを掌で包み込み、まるで愛されているかのように愛おしんだ。
そして、男が突起をぎゅっとつまむと、彼女もそれに呼応するように、自分の胸の突起物を指で弄んだ。
その瞬間、身体中に電撃が走ったかのように、心臓は激しく高鳴り、息が詰まるほどの快感が襲いかかった。
「…っ、はぁ…っ…」
彼女は、口から漏れる、小さな、しかし切なげな吐息を、誰にも聞かれないように、必死に抑えつけた。
男の指が、愛人の胸の下を滑り、滑らかなウエストのくびれから下腹へとゆっくりと進む。
やがて中指と人差し指が彼女の割れ目に到達する。
それを見た彼女は、同じように自分の手を下へ滑らせた。
くちゅ、くちゅ、と、ねっとりとした水の音が部屋に響き渡る。
それは、彼女が自身の指で描く、甘美なリズム。
愛人の口元から漏れる、小さな、しかし甘い吐息を想像しながら、指の腹でゆっくりと撫で回し、徐々に、しかし確実に早く擦り続けていく。
内側からじわじわと湧き上がってくる快感に、彼女の足が小刻みに震え始める。
身体の中心から熱が広がり、やがて全身の力が抜け落ちていくような感覚に襲われた。
彼女は、自分がまるで男に犯されているかのような妄想をしながら、その背徳的な快感に身を委ね、ついに意識が遠のくほどの絶頂を迎えた。
全てが終わった後、愛人はそそくさと部屋を出ていった。
しばらくして、向かいの部屋に現れた妻を前に、男は何食わぬ顔で再び日常の「仲の良い夫婦」に戻っていく。
彼女の部屋の窓から見えるのは、またいつもの、穏やかな景色だった。
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