=木ノ葉の里の裏通り=
里中の忍が忙しなく働く今日この頃。
暗部の仕事に没頭していたカカシは、久しぶりに同期のガイに誘われて、夕日が沈み切る前の時間ではあるが飲み屋台に来ていた。
「正規部隊に戻らないか?カカシ」
「またその話か」
不機嫌になったカカシは目線を外して暖簾の奥、屋台に面した裏通りを覗く。その露骨な会話切りにガイは口を閉じて何となく同じ方向を向いた。
「お、狐憑きだ」
「狐憑き?」
「ほら、いたじゃないか。数ヶ月前に、捨て子のさ。聞いた話によると」
二人が視線を送る先には、濃紺の髪をした女の子がいた。歳は十歳未満であろうか。カカシとガイの腰くらいの身長しかなさそうだった。
ガイは何のことかピンと来ていないカカシの顔を見て、人差し指を内におり、耳を貸すように促した。
任務に没頭していて、世間に置いていかれがちなカカシは大人しく耳を貸す。
「は?なんでその子がアレの存在を知ってるのさ」
「さあ。だから狐憑きだって」
「……」
カカシの言うアレとは八年前木ノ葉の里を襲った巨大な化け狐、九尾のことだ。
「九尾は化け物じゃない、と街中で叫んだそうだ」
ガイはそう言った。
どうして数ヶ月前に里に来た人間が九尾のことを知っているのか。それに九尾を庇うような台詞、九尾と何か繋がりがあるのか……
カカシの脳内は自然と会話もしたことのないその少女のことを危険人物だと認識していった。
「お、例の子と一緒にいるじゃないか。あの二人仲が良いんだな」
ガイと同じくもう一度暖簾の奥を見ると、金髪の男の子が後ろから追ってきたのか、二人は仲良さげに歩いていた。男の子の方はうずまきナルトといい、木ノ葉の里では知らないものはいない有名人である。
その組み合わせは良く無いんじゃないか、とカカシは顔を曇らせる。
「あの子何者なんだ」
「さあな。噂の内容が内容だから火影様が対応するらしい」
「……火影様が動くなら、まあ」
「あれくらいの子供が何かするとも思えん。そんなことより俺との勝負だ。次の勝負内容について決めようじゃないか!」
「あー、はいはい」
子供達が過ぎ去ると酔った勢いでガイが絡んできた。
これは面倒くさいことになる前に帰った方がいいな、とカカシは残りの酒を空けた。
「用事を思い出したから先に帰るよ」
「なーにいい!釣れないじゃないかカカシ」
「また今度ね」
多めに金を置いて屋台を出た。
さっきの子供達はこんな時間にどこに向かったのだろうと気になったが、明日も朝から任務があることと天秤にかけてカカシは家路に着いた。