「……またえらく大漁で」

ワンルームの玄関先で僕を出迎えた部屋の主人は、両手に溢れんばかりの色とりどりな箱を見て、半ばあきれたように呟いた。

「僕も罪な男だよね〜」
自分で言うな、と後ろから聞こえるけど無視してソファに腰掛ける。





彼女は曰く幼なじみというやつで、学生を卒業したあとも、だらだらとした付き合いは途切れていない。同じ幼なじみでもトト子ちゃんとは比べ物にならない普通の容姿、かわいげのかけらもない性格、まあ月とすっぽんである。じゃあなぜこうも入り浸るかというと、ただただ楽なのだ。高校生あたりから女の子とのつるみ方を覚えた僕はあっさりと憧れた輪に溶け込むことが出来て、その生活はとても楽しいけど、そこにいる僕はどこか自分じゃない。スタバァのフラペチーノは美味しいし、流行りのファッションの話も盛り上がるけど、僕の心はいつもどこかすっぽり穴が開いてるような気分になる。

「こんな時間だし今日は来ないかと思ってた」
マグカップを2つ持ってきたなまえは、そう呟きながらローテーブルに足を伸ばす。渡されたあたたかいココアからはちょうどいいミルクが香って、やっぱりスタバァの500円もするフラペチーノより、こっちの方が何倍も落ち着くのだ。

「バレンタインにぼっちで引きこもってるとか、笑いに来るしかないじゃん」
余計なお世話よ、と悪態をつく彼女の視線は色とりどりの箱に向けられていて、僕はふと昼間の光景を思い出す。





LINEで連絡をくれた子たちとカフェでだべりながら、僕のちょっかいへの買言葉で今日は出かけないと宣言していたなまえが、100円ショップの前で立ちすくんでいるのが目に入った。その先にはバレンタイン用品が並んでいて、もうちょっと歩けばかわいい雑貨屋さんがあるのに、せめてセリアにしてよ、ダイソーはないでしょ。

そのまま商品を持って店内に消えた幼なじみを尻目に、僕は夜の予定を決めた。





「こんなに食べたらまた太るんじゃないの」

別にこの大漁のチョコレートを家に置いてきても良かったんだけど、これを見て面白くなさそうな顔を浮かべる君を見たくなって。

「で?」「え?」
目線はスマホに落としたまま、空いている方の手を伸ばせば、間抜けな声が返ってくる。
少し前にテーブルの後ろへ隠した可愛くない箱、僕はとっくに気づいてるよ。


「メインがまだなんだけど」

僕も人のこと言えたもんじゃないけど、君が大概素直じゃないことは知ってるから、今日くらいは手伝ってあげてもいいかな。


2月14日は
あと5分で終わる



( ついったの夢松タグに乗っかった。好きな子相手にはぶりっこできない末弟がいとおしいです )




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