普段は湿っぽく感じる図書室が、今日は何だか花の咲く原っぱのように暖かで穏やかに感じる。それは何故か。


「ジョージ、ここでね、ジョバーノールの羽を追加するの、それでね…」


答え、ナマエが隣にいるから。談話室での件をきっかけに彼女との関わりが目に見えて増えた。授業だって(フレッドやリー、アンジェリーナたちも一緒だけど)一緒に行くことも増えたし、他愛ない冗談もロニー坊やにほどではないが言ったりからかってみたりすることもできるようになった。彼女のいいところもいくつか見つけてそれを宝物のようにして心に隠していたりもする。それを双子の兄はからかうような口ぶりで話すこともあるが、大抵がその裏にある応援だということはよくわかっている。この間の件で、ナマエを取り巻く女子たちはきっと俺の思いに気づいただろう。それもあってか、ナマエと過ごす時間を増やそうと奮闘してくれている。ちなみに今日は俺が苦手な魔法薬学の授業のレポートを手伝うよう友人たちが仕向けてくれた為、得意なナマエが手伝ってくれている、というわけである。(魔法薬学が苦手でよかった…)


「ナマエって、ほんと説明上手いな、才能あるよ。スネイプよりずっとわかりやすいもんな」
「そうかな、そうだったら嬉しいなあ」


スネイプ先生よりなんて恐れ多いけど、と恥ずかしそうに笑うナマエの頬がほんのり桃色に染まる。窓際の席にふたり腰掛けることのなんと心地の良いこと!晴れ渡る空の青まで心をスッキリさせてくれるのを見るところ、俺に味方してくれてるんじゃないかって淡い期待を胸に芽生えさせる。


「ジョージ、ごみついてる」


ごみついてたのかよ俺…格好悪…!慌てる俺を余所に、す、とちいさな手を伸ばすナマエの指先がシャツの胸あたりについた埃をつまむ。俺、今すっごいドキドキしてる。彼女は穏やかそうに見えて実は興味津々な少女のようなところがある。やすっぽいメロドラマのような展開も彼女の指先にしてみれば簡単にふたりだけの日常に仕上げてしまう。ナマエの指先がドキドキと脈打つ心臓にまで届いてしまいそうで、そのまま届いて俺の気持ちが伝わっちゃえとか格好悪いことまで考えていた。


「ありがとな」


彼女の頭を仔犬を可愛がるみたいにくしゃくしゃと撫でる。あー!とナマエが少しむくれるがそれがまた愛おしい感じがしたりして。そのやわらかい髪を綺麗に整えてくれるのも俺のためだったらいいのに。


「…ジョージの意地悪」
「意地悪じゃないぜ、可愛がりってやつ」


もう!と髪を直しながらレポートに視線を移すナマエ。わざと顔を除き込むと、ふいっと視線を逸らしてしまう。ああ、どんどん惹かれていく。いつもの俺の饒舌さは何処へやら、好きだって言葉をまるめて飲み込んでからかいの言葉に変える。さっき触れた指先はどうやら心臓にまで届いてしまったらしい。胸の奥がじわじわと熱を帯びて、送り出される血液が身体を巡り始める。ナマエには気づかれないように、椅子をそっと彼女の方に寄せる。もうしばらくレポートにはかかりそうだけど、肩が触れそうなこの距離にもう少しいさせてほしい。右肩辺りに漂うやわらかな心地よさと滑らかに透き通る声をもう少しだけ聞いていたい。



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