無意識の中の意識って、やっぱりあるのだろうか。ナマエと会おうと意識していなくとも、ぱったりと会えることが増えて、そう感じるようになった。心のどこかでナマエのことを考えているのかもしれないし、そういう意識がナマエとの視線を手繰ったりしているのかもしれない。この間だって、たまたま廊下で出会えちゃったし、大広間で視線を交わせたりしちゃったり、時には授業中ぱっちり目があったりなんかしちゃったりして、偶然続きの展開に期待せざるを得ないのである。もしかして彼女もそうなんじゃないかって、不明瞭なはずの運命を信じてしまいそうになる。ただ、俺の最近の悪い癖。ナマエのことを考えると口元に締まりがなくなってしまう癖。現在は大広間にて朝食の時間。頬杖ついて、かぼちゃスープをくるくるとスプーンでかき混ぜる。小さく出来る渦をただただぼんやりと眺める俺を友人たちはクスクスと笑うし、フレッドはにやにやと脇腹を小突く。
「ったく、ジョージは本当にナマエにぞっこんだな」
「ほんと、彼女が羨ましいくらいのベタ惚れ具合ね!」
「いやあ、天下のジョージ・ウィーズリーにこんなに愛されるなんてナマエってば幸せだよな」
周りにいるフレッドやアンジェリーナ、リーたちが次々に囃し立てても、以前よりこの気持ちと共にすることが多かったからか、「当たり前だろ、あんなに可愛くて素敵な女の子、この世にあの子しかいないぜ」と返せるくらい余裕ができた。(「言うねえ、ジョージ!」「はやくキスのひとつくらいしちまえ!」)彼女の前でもこれくらい素直になれたらいいのに。軽口叩きながら、彼女に触れたらいいのに。女の子をからかってみたりすることは以前からあったものの、どうも彼女にはそうすることができない。小突いたり、撫でたり、気軽に肩に触れることでさえ、彼女の前では勇気の要ることであった。結論、付き合うことすら出来ていないのに、ナマエのことが大切で大切で、壊れ物のような、宝物ののような、そんな感じがしてしまい、簡単に突っついたりすることができないのである。我ながらなんてピュア、呆れ返るくらいピュアだ。その時である。より一層、脇腹を小突く力が強くなるフレッドを少し睨んでやると、小さくひゅーと口笛を鳴らす。
「お姫様登場〜、ってな」
はっと振り返ると、ハーマイオニーと朝の挨拶を交わすナマエが見えた。(ハーマイオニーと仲が良いらしい)前髪を控え目に抑えて此方へくる彼女の姿の眩しいこと!天使だ!ぼんやりとついた頬杖はパッとやめ、だらしなく緩んだ頬を何発か叩く。背筋ももちろんしゃんとさせる。彼女に少しでもW男Wだって見てほしくて格好つけたりもする。
「おはよう、ジョージ」
「おはよ、ナマエ」
偶然にも空けていた左側の椅子は、まるで偶然にも彼女のために空いていたようである。ほら、またこうやって偶然続きの展開。「ここ、座ってもいいかな」もちろん!格好つけてたはずの顔は一瞬にしてぱああと輝く彼女の笑顔にノックアウト、完敗だ。フレッドやリーたちの声がどんどん遠くなり、ナマエの声でいっぱいになる。一生懸命話すナマエの言葉にうんうんと相槌を打つ。フレッドを横目に見ると、友人たちと「やれやれ」と言わんばかりのアイコンタクトをとっているのが見えたし、友人たちも少しからかうように笑う姿が見える。いつもと同じ食卓も彼女がいるってだけで薔薇色に見えるし、会話にも花が咲く。ナマエを見やると、少し目を伏せながら、キュッと目じりを細めて笑う彼女がとても綺麗だと思った。偶然が偶然でもいいや。今ある偶然を大切に出来ずして、何が彼女との未来を考えることが出来ようか。俺の小指の赤い糸が彼女に繋がるように、考えすぎてこんがらがって絡まらないように今は彼女と同じような顔で笑えたらいい。あ、ナマエの頬にストロベリージャムついてる。気付いたら彼女の頬に触れて、それを拭っていた。ストロベリージャムくらい真っ赤になるナマエと周りから飛ぶ黄色い声、駆け抜けるピンクの風。俺の運命の赤い糸は、ストロベリージャムに染められた赤なのかもしれない。
(砂糖漬けの赤い糸とその行方について)
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