ぱちりと弾けるように目がさめる。かぶっていたお布団はいつの間にやらちょこっとばかりクセの悪い足に蹴られてベッドの端に縮こまっている。ぐうっと伸びをすると、あくびがひとつ溢れた。あたたかい。すうと息を吸い込めば、春のにおいと炊きたてのご飯のにおい。


「起きた?」
「…おはよう、サボ」


ご飯できてるぜーと間延びした声で髪をくしゃくしゃに撫でる大きなてのひら。愛おしい声。だいすきな恋人の声とだいすきな恋人の作る朝食のにおいで目覚めるなんて、なんて最高。そのまま上半身を抱き起こされて、おはようのハグ。あ、ご飯のにおい。


「ほんと、休日は寝坊だよなあ。ナマエちゃんはさ」
「ごめんごめん」
「ま、そういうところもかわいいんだけどな」


ちゅっと音を立てて頬にキスをひとつ。誰もが赤面するような言葉を簡単に紡いでしまう君、まるで童話の中から飛び出してきた素敵な素敵な王子様。王子様は平々凡々なわたしの心を飄々とかっさらっていく。ときどき、わからなくなる。どうしてこの王子様がわたしの隣に7年近くもいてくれるのか。


「ご飯食べようぜ」
「ん、起きる」
「味噌汁はナマエちゃんの好きなじゃがいもと新玉ねぎな」


軽く髪を纏めて食卓に着く。湯気の立つ真っ白なご飯とお味噌汁、卵焼きはおだしの味、辛子は多めの納豆、こんがり黄金色に染まる鮭の塩焼き。どれもこれもわたしの大好きな味付けの朝ごはん。テーブルにはピンクと水色の箸が仲良く行儀よく並ぶ。

このひとを恋人に選んでよかったって、何度だって思うし、愛おしくて仕方ないとも思う。実った小麦のようにやさしい金色のやわらかな髪も、華奢に見えて意外と筋肉質な身体も、笑うとへにゃりと下がる目も、節々はしっかりしている指先も、ぜーんぶ愛おしいと思う。どうしてサボがわたしを選んでわたしの隣にいてくれるのって思うことなんて、数えたらキリがないくらい。理由なんて知らないけれど、君の好きなものならいっぱい知ってる。毎日愛おしくって仕方なくて、大切にしたい。むやみやたらに並ぶ理由なんて要らない。サボのことが大好き。それでいい。


「いただきます」


とろけそうな笑顔で卵焼きを頬張るサボとわたし、7度目の春。


銀河の片隅で手をつなごう
170415


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