重くなる瞼をゆっくり持ち上げて、うっすらと夕焼けの世界に滲む影を見つめる。


(あ、)


思わず声をあげそうになるのを堪えてぎゅっと目をつむった。マルコ隊長だ。うーん、よく考えてみたらぎゅっと目をつむったら不自然だよねえ。うとうとに任せて目をつむることにしよう。このまま近付いてきたら、目を開いてびっくりさせちゃおうかな!隊長には簡単にばれちゃうかなあ。そんなことをぼんやり考えていたら、気配がわたしの隣で止まってしばらく動かない。時間も止まったみたいな雰囲気はわたしを眠くさせる。眠っちゃわないうちに悪戯しちゃおう。自然な感じで目をつむって、心の中でカウントダウンをはじめる。5、4、3、

記憶って言うのはすぐ曖昧になる。夢の中でも、夢は見ることは出来るんだなあとぼんやりと考えていた。もう瞼を持ち上げるのも難しいくらいに眠い。でも、なんでだろう。カウントダウン残り3秒の時、くちびるが、妙にあたたかかったのを覚えている。けれど今は、そんなことを考える余地もなくって、ただ夢の世界に誘われてふわふわとした雲のように意識を預けてしまったのだった。





次に目を覚ました時には、もう外は真っ暗で、眠気から解放されたっていうよりはどっちかって言えば、肌寒さに起こされたような気がする。伸びをするのとおんなじくらいに図書館の窓から見えた空がもう紫色やら橙色やらに染まってしまっていた。結構居座っちゃったなあ。荷物と上着を持って階段を駆け下りる。窓から見える星が綺麗。肌寒くてもこんなに綺麗な空が見れるなら良いかも。…それにしても、幸せな夢だったなあ。わたしの夢の中でマルコ隊長が優しく、あ、いつも優しいんだけど、いつもより、もっと優しく微笑んでたことと、それと、くちびるが、あったかかったことを覚えている。

あの日からも、マルコ隊長とは普通に戦闘に出たり、甲板での偵察をしたり、みんなでわいわい食事をしたり、マルコ隊長から普通におはよう、だとか挨拶もしてくれたりして、隊長の態度は当たり前だけど普段とまったく変わることもなかった。それなのに、わたしときたらあの夢を見てから、なんとなく、ほんとになんとなくなんだけれど、よそよそしい態度を取ってしまうようになってしまったのである。それに最近、仕事をしても上の空で、あのエースまでもが、わたしにちょっぴり気を使ってくれている(って言うよりは、気持ち悪がっているに近いんだけど)。なんだか、もやもやするなあ。


くちびるに触れあって、その先はまだ知らない関係 171202



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