今日はほんとに良い天気だったなあ。ぽかぽかの小春日和だから、今日もお昼寝しようと訪れた図書室は何時にも増して、人が少ない、というよりいないように思う。


「なまえ!」


わたしの名前を呼ぶ声がして振り返ったら、まさかまさかのマルコ隊長で、えっ、気まずいのわたしなんだけど、でも気まずい態度取るのも駄目だし…!なんだかあたふたしてしまったわたしを見てちょっとだけ苦笑を零した隊長が「何を慌てることがあるんだよい」とそっと隣の椅子に腰掛ける。えええ、どうしよう!き、気まずすぎる…!ていうか、勝手にわたしが気まずく思って、勝手に思い上がってるだけなんだけど、ここは話を切りだしてもいいのかなあ。


「…起きてたんだろい?」
「え」


少しも悪くなんて思っていないような無邪気な目をして、マルコ隊長はわたしの顔を覗き込んだ。隊長のとろんとした瞳の中に映り込んでいるわたしはやけに挙動不審で酷く滑稽に見える。瞳に映り込むわたしを見ないように、隊長の後ろにある本棚に目をやった。何の話ですか、とようやく絞り出した声はやけに震えていてわたしらしくないと思う。やっぱり、やっぱり、夢、じゃなかった。そういうことだ。わたしの気持ちも質問も珍しく無視して、マルコ隊長がまさに、にっこりとした表情で口を開いた。


「キスした時のはなし、な」


心臓が止まってしまったんだと思った。それはあまりにも突然で、あれ、やっぱり、ほんとのほんとに夢じゃなかったんだ。それを自覚した時、勢いよく心臓が動き出して足のつま先から頭のてっぺんまで一気に血が回り始めた。あ、なんだか、貧血によく、似てる感覚。


「好きだよ、なまえ」
「!!」
「お前、いつも寝てるからよい、寝込みを襲っても大丈夫って思ったんだけどなァ」


こんな時だけ起きてたなんてなあ。マルコ隊長がやられたと言わんばかりに口元をにやりと持ち上げる。わたしだって、そんな毎日毎日寝てるわけじゃ、いや、寝てたかもしれないけど。しかも、マルコ隊長ってば、あっさりキスの理由をわたしに告げるから、なんだか拍子抜けしちゃった。なんだかわたし、悩んでたのばかみたいだ。隊長のせいで、わたし眠れなかったんだから…!隊長のこと、いっぱい考えて、それでももやもやして、寝ようとしても隊長の顔が浮かんできて、わたしほんとに隊長のことしか考えられなくなっちゃったみたいで。ほんとに眠れなくなるくらいに、マルコ隊長のこと。そして、ようやくここで気付くのである。あれ、わたしもマルコ隊長のこと、すき、なんじゃないか。いつの間にか、わたし、マルコ隊長のことすごく思ってた。もやもや霧のかかっていた「すき」という気持ちを肯定したら、胸につっかえていた何かが晴れた。


「わたしっ、」
「うん?」
「わたしもマルコ隊長が、すき…!」


一瞬驚いたような顔をしたマルコ隊長が、知ってるよい、そう言って目尻を下げる。ああ、いつからだろう。この笑顔がわたしの傍にずっと居ればいいのにって思ってたのは。マルコ隊長は寝ても良いんだよって笑うけれど、何だか緊張するなあ。その時、ふわりと背中にぬくもり。マルコ隊長の上着が優しく掛けられている。いいにおい。背中をトントンとしてくれる隊長に、「隊長、わたし子どもじゃないんだけどなあ」と笑って見せたら、「まだまだ子どもに変わりねェよい」と笑い返してくれた。マルコ隊長の上着から、いいにおいがふんわりとわたしを包み込む。あ、そういえば、ずうっと借りてたブランケット返さなくちゃ、ね。そう思いながらも瞼がちょっぴり重い。目が覚めてもマルコ隊長の笑顔がありますように。


ほら、また朝が恋しくなる
171210 完結


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