医務室だってわたしにしてみれば仮眠室になるのだ。いわゆる守備範囲ってやつだ。医務室にあるふわふわのソファなんかは特に最高だけど、ナースさんたちがカルテを書く為の机も書庫ほどではないもののなかなかいける。今日はちょっと寂しいけれどオヤジや隊長クラスのひとたちは集まってなにやら話し合いになってしまったものだから、医務室独り占めってわけだ。いつものようにこっくりこっくり船を漕ぐわたし。ちょっとだけうるさいエースだっていないからなんだかちょっぴりラッキー。…あ、マルコ隊長には、ブランケット返したかったんだけれど、というわけで。


「…おやすみなさーい」


小さく呟けばやっぱり、おやすみ3秒。ひんやりと頬に当たる机が気持ちいい。(ナースさんたちからはいつでも寝にきていいのよって言われてるから了承済み!)ああそういえば、エースやサッチ隊長にトランプやるから甲板で待っとけって言われたんだっけ。隊長たち、忙しいでしょ…。なんてことない約束がゆらりと揺れて睡魔がやってくる。ぼんやり微睡む視界とやわらかい日差しが気持ち良くてわたしはいつものように机に体を預けて目を閉じた。





ぱちんと睫毛が弾けるみたいに目を覚ませば、なんだかわたし、さっきと違う、みたい?体がふわふわのソファに沈んでいて、上着がわたしにそっと掛けられていた。わたしのお気に入りの可愛い花柄のクッションを一撫ですると小さな頃に読んだ童話のお姫様になったみたいだ。ところで、わたしはどうしてここにいるのでしょう?シンプルで細身の上着の袖はわたしの体重に押し潰されてくしゃっとしわになってしまっている。


「マルコ隊長、?」
「おう、なまえ。おはよう」


マグカップを片手に、コーヒーの香りをゆらゆらとたずさえて、にっこり微笑むマルコ隊長。ああどうやらまたわたしってば隊長に迷惑をかけてしまった、みたい。


「あんまりにも寝づらそうだったから、移動させてもらったよい」
「へ、重かったですよね!ごめんなさい!」


首を横に振るマルコ隊長の右手に握られているティーカップがやけに可愛らしく見えたと思ったら、隊長が服を着ていないことに気付いた。もしかしなくても、この上着はマルコ隊長のものだ。それに、なんでマルコ隊長が?隊長は話し合いに、行ったはず。


「なんで俺がいるのか、って思ってるんだろい?オヤジたちとの話し合いが思ったよりも早く済んだんだよい」


わたしのことなんて、お見通し。もしかしたらわたしの顔に書いてあるのかも。ちょっと恥ずかしくなったりしてソファに顔をうずめたら、薬品とみんなの香りをお腹いっぱい吸い込んだソファはとても優しい香りがした。まだ眠るか?とマルコ隊長が優しく言うものだから思わずソファに埋めた顔を縦に動かした。また隊長にお礼をしよう。一瞬だけエースとサッチ隊長のトランプ勝負のことが頭を過ぎって、ああ後からどやされるなあとか考えたりもしてみたけれど、それは優しく優しくわたしの頭を撫でたマルコ隊長の男のひとの手のひらに吸い込まれていってしまった。


密やかに息づくスピカの指先はただ愛しく、まばたき 170409

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