「なまえ〜〜!!!」
「うわあ、エース…!」


モビー・ディック号に戻れば、大声でわたしの名前を呼んで怒るエースが真っ先に目に飛び込んだ。あーあ、やっちゃった。「おー、お帰り、なまえ」「ようやく帰ってきたか!」サッチ隊長やジョズ隊長たちがひらひらと手を振り出迎えてくれる。ただいまー!とへらりと笑うと、エースがバタバタと歩み寄ってきて、ごちん!と頭にげんこつをひとつ。え、エース、いい、いたい!容赦なし…!「こらエース!女の子相手に全力のげんこつなんて酷いよい!」マルコ隊長がエースの眉間を突いてしかめっ面。当の本人のエースは鼻をひとつ、ふんと鳴らして笑顔でわたしを睨み付ける。


「俺とトランプやるって言ったろ!あと買い出し当番俺たちだったんだからな!!」
「え、えー…!」
「罰として!甲板の掃除やれよ!今回はそれで許してやる!」


これは痛い。エースにいただいたげんこつよりも、数倍。モビー・ディック号は、言わずもがな広い。そ、そんなあ、と口から出た言葉は思ったよりも情けなかった。エースの鬼!買い出し当番忘れたわたしも悪いけど!


「あーあー、なまえ、可哀想に」
「手伝ってやるか」
「おい?!駄目だからな!!おめェら大体、なまえに甘すぎんだよ!!」
「おいおいエース、なまえは俺の部下だよい。責任くらい持つから、可愛い可愛い部下くらい甘やかしてもいいだろ?」
「…な!」


マルコ隊長があんまりおっきな声で言うから、思わず顔を上げてしまった。かわ…!ぼっと顔が熱くなって思わず頬を押さえる。いやいや、でも部下として、かわいいって、そういうことだ。ついでに心臓のうるさい音も一緒に抑えることにしよう。





お、お、終わったあ!やってやった、やってやったよエース!ピカピカに掃除した甲板の上に手足を放り投げて寝っ転がる。気づいたらお月様は頭上まで昇っていたらしい。やると決めたらやる。それがわたしのいいところだって自負している。


「なまえ」
「ひゃあ!」
「ハハ、驚いたかよい?」
「(び、びっくりした!)ま、マルコ隊長…!」
「なまえが掃除を終えるの、待ってたんだよい」


お前はやるときはやる女だからよい。にこりと笑うマルコ隊長はどれだけ優しいんだろう。その懐の広さにも、マルコ隊長が一番隊隊長に適任だということがよくわかる。ちょっぴり鼻が赤くなってるところを見ると、どうやら長い間待っててくれたのかも。途端に申し訳なさでいっぱいになる。


「ごめんなさい、マルコ隊長…わたしが当番ほっぽり出してしまったから…」
「そんなに落ち込むな。それに、これは俺が勝手にしたことだからよい」


笑うマルコ隊長に釣られて、思わず笑ってしまう。月明かりの下でも、マルコ隊長が無邪気に笑っているのがよくわかる。


「へっくしょい!」
「っくしゅ、」
「おー、同じだよい」


冷たさのせいで、体がきいんときて頬を押さえるとのと同じタイミングで2人ともくしゃみをするから、思わず噴き出してしまった。おっと、だめだめ。マルコ隊長はわたしの為に待っててくれたんだから。あー寒い。夜が来るのは早いらしい。そんなに急ぎ足で来なくても良いのに!


「昼間はありがとな」
「え?いいんです。わたしこそありがとうございます、それとごめんなさい」
「良いってことよ。俺が待ちたいと思ったんだからよい」


ほんとに待っててくれてありがとうねえ、マルコ隊長。ほっといてくれても良かったのに、優しいなあ、マルコ隊長は。寒さに冷える夜空を見上げたら、星が綺麗だなあと見とれてしまった。


「あ、そうだ」
「はい?」
「もうそろそろお腹空いたんじゃねェか?あったけェスープでも飲むか」
「え、いいんですか!」


全然かまわまねェ、と笑う、頭ひとつ分大きなマルコ隊長の横をびゅうんと風が吹き抜けた。マルコ隊長といると、沈黙も気まずくもないなあ。むしろ、心地いい。時々、とんとんっとステップを踏むように船の淵に飛び乗り歩いてみる。「なまえー、そんなことしてると、落ちるよい」落ちませんー。わたしだって伊達に白ひげ海賊団の一番隊副隊長やってないですからー。と思ったら、ちょっとつまづいた。危ない危ない。それから後は、何を話すわけでもなく、ただぼんやりと歩いた。ただそれだけのことなのに、満ち足りた気分になるのって不思議。マルコ隊長だと特に、ね。


The plankster prance alound the all over the love! 170503

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