家出宣言をして家を出たあと、その日泊まるホテルを探すよりも先に行ったのは友達への連絡だった。

条件つきでも家を出れたことが嬉しくて、浮足立ちながら友達のうめちゃんに連絡をすると、矢継ぎ早に聞かれたのが「ホテルを予約してから家を出たのか」ということだった。
家出に必要な荷物とお金しか持ってないので、ホテルを予約しているわけもない。
深刻なことでもなかったので軽く『これから予約するよ』と伝えると、それはもう怒られた。

うめちゃんは小さい頃から家族ぐるみで付き合いがある子で、私と一緒で裕福な家庭の生まれだ。
そのため、お互い裕福ながらにぶち当たる問題も乗り越えてきた。

それなのに、名前は何故ホテルも予約せずに放浪しているのかと。
すぐ実行に移したから時間がなかったかもしれないけど、せめてホテルを予約してから電話してこいと。

そんな心配からくる友達の怒りを相槌を打ちながら受け流し、その日に出た結論は「ホテルに行くぐらいなら家に来な」だった。


想像してなかった着地点だったため、家出をして47分で実家に電話をしなければいけなくなった私は家出している人の中で断トツおかしいと思う。父は電話越しで笑っていたけど、家を出て早々に電話がかかってくるとは思わないよね。


うめちゃんの家は相変わらずの広さとアジアンテイストな家具で纏められていて、動物と暮らすゲームの家具を思い浮かべた私は悪くないと思う。ロイヤル系の家具も好きだけど、アジアンなものも好き。

うめちゃんの家で実家では滅多に出ない中華料理を食べ、お酒を飲み、お風呂ももらってハッとした。
これって家出じゃなくて、友達の家に保護されている状態なのではないかと。
住む場所どうしようと思ってはいたけど、うめちゃんの父親に付き合ってお酒を多量に飲んでしまったので眠気に襲われて寝てしまったのは悪くないと思う。


家出2日目。
今日は、うめちゃんに手伝ってもらいながら仕事と住居探しをしようと思います。


それがすごくあざやかだ




『どうしよう、どこに住もうかなぁ』
「家具家電付きがいいんじゃない?そんなに長く家空けるわけでもなさそうだし」
『家具家電付き。誰かが使ってたの使うの?』
「あー、確かに。もうさ、男でも捕まえて居候させてもらえば?手っ取り早い」
『うめちゃん、真面目に考えてよ〜』
「考えてるってば、考えてなきゃ自分の事でもないのに情報誌見ないわ」


うめちゃんは仕事関連、私は賃貸関連の情報誌をめくる。
2人で横になってもうめちゃんのベッドは余裕があるので、体勢が辛くなったから向きを変えていると、仕事関連の情報誌を見てたうめちゃんが笑いだした。


「あー、お腹痛い。笑いすぎた」
『そんな笑うようなこと情報誌に載ってるの?』


ひとしきり笑って落ち着いたのか、「まぁね」というだけでお腹がよじれるぐらい笑った要因を教えてくれない。うめちゃんの中でツボだったことがあるのだろう。


「あ、ここ良さそうじゃない?」
『どこ?』
「Bar.AMERIってとこ。夜の仕事だから時給はいいし、場所が場所なだけに住む場所も提供しますだって」


うめちゃんが指してる先の情報欄を見てみると、確かに夜の仕事だから時給はいい。
でも、社員寮とか完備してるところって正社員じゃなきゃダメなんじゃなかったっけ。
今まで父親の仕事の手伝いしかやったことないから分からないけど、きっとそうだと思う。
バイトに住む先まで提供してくれるところなんてあるんだろうか。


「、絶対場所分かってないでしょ、その顔」
『元々自分の住んでる場所の周辺とかしか知らないしね。移動もほぼ車だし。パッと住所見ても何処か分からないかなぁ』
「あー、そうだった。名前は地名あんまり覚えてないんだった。この住所、SWORD地区の真ん中。不可侵の場所だよ」
『SWORD?SWORDって、あの?』
「そうそう。あのSWORD」
『待って。前にその辺りの地図見たことあるけど、近くに駅とかあったっけ?』
「駅ぃ?あの辺りって都市部よりも遅れてるから駅あっても機能してないんじゃなかったっけ」


確か黒双地区止まりだった気がする〜という呑気な返答に、口が塞がらないとはこの事かと思った。

車の免許は持ってるもののペーパーに等しい私には移動手段がない。
いや、なくもないけど。自転車とか、徒歩とか。

でも、自転車は高校以降乗ってないし(そもそも主な移動手段が車だから自転車すらあまり乗らなかった)、ましてや徒歩なんて普段から車移動に慣れている私の脚には凄く負担がかかるはず。


「とりあえず、分からないところは電話して聞けばいいと思う。はい、思い立った時がその時」


思い立ったのは私じゃなくて、うめちゃんでしょ。とか、色々言いたいことはあったけど、差し出された携帯画面を見ると既に電話を掛けている状態だったので、文句は無理やり飲み込んだ。