「…なあ、聞いてくれよもふこ」

「ん、どした団長?」

いつになく元気のない団長が、やる気なさそうに座りながら話しかけてきた。こんなに元気のない団長は、久しぶりだと思って話を聞いてあげることにした。


「…最近な、タッグを組んでいるお前らを見るのが辛くてな」


唐突に言われた、その意味が分からなかった。


「…え?私とフェイタンのこと?なんでまた」


「何故、だろうな…」

フッ、と自嘲気味に笑う団長。ちょっと言い回しとか気持ち悪いけど、相当な落ち込み様だから言わないでおく。かと言って、迂闊に元気出してなんて言える雰囲気じゃない。あー、私って人を励ますのが昔から苦手だったんだ、忘れてたな、とか思いながらぼーっと団長を眺めておく。


「ただ、」

「ん?」
 
下を向いていたままの団長がまた重い口を開けた。


「…この感覚、何だか非常に懐かしいんだ」

「なつかしい…?うーん、ますます分かんないなあ。何だそらぁ…」

「はぁ…」

「………」

なんだこの空気、重すぎるな、と他の団員が広場に居ないことを恨んでいると、パクがこちらにむかって歩いてきていた。助かった、と心の中でため息をつく。


「どうしたんです、団長。ため息ばっかで」

「ああ、パクか。…む、そんなにため息ついてるか?」

「ええ。まるで恋する女子高生だわ」


「ぶ」「…………」

何それ気持ち悪い、とまたもや団長を傷付けそうな言葉を、すんでのところで飲み込む。それから、横目でちらりと団長を見る。相当深く考え込んでいるようだ。こいつ、やっぱり天然かも。

向こうから聞こえてきた階段を降りる音が、今の変な沈黙を破った。
何となくそちらを見上げると、問題のフェイタン。

「もふこ、何してるか。シゴトよ。早く来るね」

「あ、フェイタン。すぐ行く。じゃ、仕事行ってくる。パク、後は宜しく頼んだ!」

「わかったわ、気をつけて」

「気をつけて行って来い」






「…はあ、」

「ほら、また」

「ああ、…そうらしいな」

「簡単なことよ、団長」

「ん?何がだ」

「あなたのその変な感覚ってやつよ」

「本当か?!」

「ええ。それはズバリ、」

「……」

「"恋煩い"」






「ま、さか。俺が、か…?」

「そう。よく考えて」




「そ、そうだな…!この気持ちは、確かに…」

「良かったわ、気づいてもらえて(本当に溜息ばっか付かれてて、たまったものじゃなかった)」

「よし。そうと決まったら、もふこに早速伝えるとしよう」

「あの子たち、簡単な仕事だから直ぐに帰ってくるわよ」








「ただいまー」 「ただいまね」




「あら、おかえ「もふこ!!!」


「うわ、どしたの団長…」





「好きだ。」


「あ、え?」



「もふこが、好きだ」

「ええ?どうしたのいきなり…」


「お前は、俺が嫌いか…?」

「何いってんの?私も好きだよ」




浮かれ騒げやご都合主義者!
       







「…!…パク!」
「はいはい良かったですね団長。じゃ。(女を手玉に取るあの団長ともあろう人が…)」
「もふこも俺が好きだったのか」
「うん。何をいまさら」
「…いつから好きだったんだ?」
「ん、と。会ってちょっとしてからかな」
「俺もそうかも知れない」





100820 くそおとめごみへたれ団長



 


-Suichu Moratorium-