「………」
「………」
今日は、とっても暖かいです。なので風通しの良いアジトは、何だかとっても居心地がいいです。なので私は、楽しい楽しい推理小説を熟読しています、まる。
「…ねえちょっとクロロ」
「なんだ」
「集中できない」
「俺にか?」
「ふざけるな殴るぞ」
「何にだ?」
「分かってるでしょ!本に」
「別に読書の妨げをしているつもりはないが」
そういうクロロは、私の真向かいで此方を向いて座っている。視界に入って邪魔くさいのはもとより、視線がうざい。
「ほら、何て言うか、ちょっと言いにくいけど…私の部屋だから出てけ」
「断る」
「なにそれ!しつこい事するなら、嫌いになるよ」
「それはないな」
「…何その自信!腹立つー」
「当然の帰結だ」
「どう考えたらそうなるのかね。君の頭は、案外よわいのかね」
「分からないのか?」
「全然。もういいよー、とりあえずほら、下に行ってなよ。皆いるから」
「断る」
「もう団長きらいでーす。行かないなら、本当に嫌いになるからね」
「ああ」
「…ふーん。団長、別に私に嫌われても良いんだー、ふーん、そうなんだー」
「構わない」
「…何それ。じゃあちょっとイルミと結婚してくるね」
「ふっ、してこい」
「うわ、むっかつく!じゃあ結婚した後に、フェイタンともラブラブしてやる」
「すればいい」
「…そのままフィンクスともラブラブしてフクスィンたぶらかしてやる」
「ああ」
「…何か今日、やけに冷たいね」
「そうか?」
「うん。いつもなら、少なくとも、そうだね、眉の一つは動かすと思う」
「そうか」
「…クロロ、どうかしたの?」
「もし、」
「え?」
「もし、もふこがそんな事しても、最終的にはオレの元に戻ってくるだろ?」
「…は」
「つまり、もうオレ以外の男には興味がない。色々巡り巡っても、結局オレに落ち着くのが目に見えている」
こいつが来てから、私の活字を追う目は最早文章や単語の意味なんて汲み取っていない。クロロの言葉に耳を傾けるのに精一杯だった。
それでも読み耽る振りを続けるのは、何だか悔しいからだろう。
「…へえ?じゃあ私は、もう一生クロロの虜、ってこと?」
「ああ。もうオレ以外見れないって事だ」
だからそんな無意味な脅迫などちっとも怖くないな、と言って笑った彼に何も反論出来ないのは、もしかしたらもう、彼の言ってる様な状況になってるからかもしれない。
その自信は何処から来るんですか
(クロロの虜、ねえ…)
(そうだろ?)
(…分かんないよ?ちょっとフェイと遊んでくるね)
(…!)
20110320
後手のクロロ