「今日もまた一段と疲れたねぇ」

「あー、お疲れさまです…って、先輩はずっと落書きしてただけじゃないですか!」

「むっ何言ってんの、ほーすけくん!私は、ビラを書くという立派なお仕事をしていたのだよ」

「あの、落書きが、ですか…」

「前髪をそんなにしてるオドロキくんには、私の美的センスは到底理解出来ないよね」

「…クセですから、これ」

「そんなこと言って、絶対気に入ってるでしょ?ね?ね?ね?」

「…それにしても、うちの事務所ってそんなビラとか配る必要あるんですか?うちは牙琉先生のお陰で、何もしなくとも十分有名だと思うんですけど…」

「はは、そんなんじゃダメだよほーすけ野郎!」

「………」

「そんなんじゃダメダメだよ、ほーすけ野郎!」

「何回も言わないでくださいよ!」

「だってきみ、意識低すぎ!そんなダラけてたらやばいんだよ!将来もし、先生に何かあったら、うちの事務所はどうなっちゃうと思うの?」

「何言ってるんですかもふこ先輩。先生に限って、何かあるわけないじゃないですか」

「わかんないよー?一寸先は闇って言うし」

「ありませんし使い方なんかおかしいです!」

「と言うか寧ろ、先生自身が闇だったりして…」

「そ、そんなわけ無いじゃないですか!!変なこと言わないでくださいよ!」

「なにそんなに焦ってるの、あははははは」

「あああ焦ってませんよ!」

「じゃあ、そのどもりは、何て説明するつもり?」

「これは、その、ダイジョブでありますからして!」

「それ、モノマネ?だめ、似てない。減点」

「えー、似てますよ!って、そんなことより、ですね。……先輩は、その。もし、もしですよ?その、」

「この事務所に居れなくなったら、どうするかって?」

「はい、まあ、そうです」

「ほーすけくんはどうするの?」

「オレですか…。行くところ、無いですね…。何しろ初めての事務所ですし」

「そうだよねえ。ま、私はあるんだけど」

「え、あるんですか!」

「うん、法律事務所じゃないんだけどね」

「ああ、一般企業とかですか?」

「いや、違うの。芸能事務所、なんだって。知り合いが所長だか副所長だかやってるんだけどさぁ」

「ええ!オレを置いて、そっちに行っちゃうんですか?!と言うか、芸能って…何ですかそれ…」

「よく知らないけど…マジシャンとかいるみたい」

「えええ!…もふこ先輩、さすがにもうちょっと将来は慎重に決めた方が良いと思います…」

「そう?じゃあ、どうしようかなあ。オドロキくんは、どうするの?」

「オレですか?うーん、取り敢えず信頼出来そうなセンセイを探してみる、って感じですかねえ」

「へえ。なんだかパッとしないね」

「確かに、パラリーガルが芸能事務所に入るよりは印象は薄いですけどね」

「嫌みったらしいデコすけクンだなあ!チミは!」

「先輩がオレの進路にケチつけるからですよ」

「えー私のせい?」

「120パーセント先輩のせいです!」

「えー、小生意気な後輩だなあ。将来、私の事務所開いても、オドロキデコっぱちという人間だけは入れてやらないことにする」

「そんなこと言ってると、オレも入れてやりませんよ」

「…え、入れてくれるつもりだったの?未来の王泥喜法律事務所に」

「…まあ、なんというか」

「わー!ほーすけくんだいすき!共に稼ごう!」

「わばば!抱きつかないでくださいよ!」



「楽しそうですね、何をやってるんですか?」


「が、牙琉せんせい…」

「あ、いや、その…(センセイに、もしもの事があった後の話をしていたなんて、言えるわけないだろ!)」



いつかのみらい
遠いかどうかなんて、どうでもいいよ


「私も混ぜてくださいよ」

「あはは、はははは!じゃっ、やたぶき屋行きませんか先生!!!?!」

「(…く!苦し紛れだ!)」


「…行きましょうか、楽しそうです」





20121025



やたぶき屋だいすき
屋台のラーメン屋なんて、良いなあ。
本当に、雨水とか使ってるのかしら。



 
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-Suichu Moratorium-