なんだろう。
さっきから、なんだか頭に違和感がある。
「ね?ほら形状記憶」
「確かにそうだね」
「ほらほら、ぴょーんって戻る!」
頭。髪の毛が、もぞもぞするな。と意識してから、耳に入ってきた音声が、言語として脳に達した。
形状記憶、?
もぞもぞ、
「ほら、ぴょーん」
「あああ!もふこ先輩!!おれの前髪で遊ばないでください!」
「あ、ようやく起きたのデコ助」
「さすがおデコくん、鈍感なだけあって気付くのも遅いね」
「しかも職務中に居眠りときたもんだ。先輩に何されても文句言える立場じゃないよねえまったく」
目の前にいた(予想通りの)もふこ先輩と(予想だにしなかった)ガリュー検事が、二人で腕組みをしならがら渋い顔で此方を見て、俺を罵ってる。
と言うか、しょっちゅう職務中に囲碁や将棋をさしてるもふこ先輩もどうかと思うのだけど。しかも関係のないガリュー検事に至っては何故昼間なのに此処にいるのか分からない。暇なのか。でも今言ったら、火に油を注ぐようなものだ。やめておこう。
「すみませんって。もう居眠りなんてしないので、…ああ!前髪いじらないでくださいよ!」
「えーやだやだーまだまだーほら、ぴょんって!」
「ほんと、凄いねこれ」
あんたのドリル髪の毛の方がよっぽど凄いだろ、と内心毒づきながらもふこ先輩からの攻撃を避ける。
「あー!つまんないよ法介くん!」
「つまらなくないですよ!オレで遊んでないで、仕事してください!」
「どうしたの?コワイなあ。不機嫌?寝起きだから?」
「い、いえ…すみません」
「というより、居眠りしてたおデコくんが、それ言える?」
「う……」
二人で楽しそうにしてたのに対してなのか少しイライラしてしまったところ、ガリュー検事が正論をぶちかましてきた。唸りながら彼を見れば、前髪を掻き上げながらの腹が立つほどの爽やかなスマイルを投げられる。ああ、やっぱりこの人苦手だオレ…。
「そ、それはそうと、なんで検事がいるんですか…」
「昼休憩に何処へ行こうが自由だろう?」
「は、はあ…」
「それよりもふこちゃん、お昼一緒にどうだい?」
再びギラギラのオーラとジャラジャラの音を放ちながらもふこ先輩に向き直る検事さん。
絶対に先輩に会いに来たんだろうな、という確信が易々と抱ける程の態度に、オレは少し気分が沈んだ。
「え?お昼?私、お弁当なんだよね。ごみんに〜!」
「そうなんだ、ザンネン」
少しも申し訳なさそうじゃない先輩の返しに萎む検事さんのオーラ。あ、これちょっとオモシロい。
そんなことでなんとなくヨユウを取り戻したオレは、腕時計を見たもふこ先輩を仰いだ。
「あー、もうお昼か!法介くん、お弁当買ってきていいよ。私たちも休憩にしよう」
「あ、そうですね!オレ、行ってきます!」
先輩はいつも、自分でお弁当を作ってきている。それはそれはヘルシーな内容で、見る度にさすがだなあと思ってしまうほど。それに対して、そんな技術もないオレはこのビルの近くにあるお弁当屋さんに毎日通っているのだ。
そんなワケで今日もオレはお弁当屋さんに向かう。
事務所の扉に行く途中、背後からとてつもない負のオーラを感じて、思わず振り向くと、立ち尽くすガリュー検事。
例のごとく、行く場所を失っている。
「あ、ええと、ガリュー検事もお弁当買いませんか?」
なんて言っていいのか分からないまま咄嗟に出た言葉は、お昼を誘うという思わぬ内容になってしまった。
「ご一緒してもいいのかい?」
「あ、はい。もしよければ、ですけど」
そう言いながら、はたと検事さんの後ろにいるもふこ先輩を見ると、少し、いやかなりニガい顔をしていた。
それを見てもふこ先輩も彼が多少なりとも苦手なんだな、と思うとなんとなく安心して嬉しく思ってしまうオレは、ずいぶん性格がワルいみたいだ。
たゆたう気分に掛けるゼロ
「…おデコくんが休みの日ってないの?」
「お、教えませんからね?!絶対ッ!!」
20150112