私とやつの、甘えた関係


◎少年?青年?あたり


楽しいことを思い付くのは、やっぱり良い気分だ、と私は人知れず微笑んだ。 
それを気兼ねなく実行出来るっていうのも、最高に晴れやか。
そんな気分で、まだ早朝で人のいない里の中を、大きな網を片手に、軽い足取りで進んでいった。

見覚えのある大きな家、そのうちの一つの窓に私は静かに飛び乗った。都合よく窓も開いてるし、なんて運が良いの!まるで神様が私を応援してるみたい!なんてわざとふざけたことを考えちゃう。
そして窓からそっと侵入。

その部屋には、もちろん私の標的、奈良シカマル。気持ち良さそうにすうすう眠ってやがる。
思わず緩んでしまう私の顔。いひひ、天誅天誅〜!とノリノリな感じで、別に何も悪いことをしていないシカマルに対して私はこれからいたずらをするのだ。いやまあ、普段から私の可愛げのある悪戯をマジで叱ったりするところからして、シカマルに悪くないところなんてないはず。そうだよ、そうそう。

一人納得してから、彼の部屋の床、いたるところに水遁で深めの水溜まりを作る。そして、さっき釣り上げたばかりのニジマスをそこに二匹ずつ入れていく。
あっという間に簡易釣り堀の完成!
これはきっと泣いて喜ぶぞ、シカマルのやろう。
なんたって釣りとかそういうじじくさいこと好きそうだし、何より食材であるニジマスを12匹ももらえたんだもんね!

あ〜今日も良いことした!一日一善!

じゃあね、と眠ったままのシカマルに手を振って、素早くその部屋を後にし、これからすぐに任務に向かう。 
さっきのあれで多少チャクラを使っちゃったけど、まあどうせいつもの雑用任務だからどうってことない。
ああいうチャクラの無駄遣いって大好きだし(例えばほら、木遁とかで机とか椅子とかつくるのとか)、それよりもなによりも、日課のようなものであるシカマルへの悪戯の方がはるかに重要なのだ。









任務から解放されたのは、ほぼ夕方といえる時間だった。

もちろんそんなに強いとは言えない私に回ってくる任務は、ほとんどが雑用だし今日ももちろん例外じゃなかったのだが、誤算だったのが、その仕事が、お偉いさんの子供のお守りだったってこと。
私自身の脳みそが全然大人じゃないんだから、子守りなんてほんとに神経使うし最悪の仕事。

ずっと緊張状態が続いた任務も終わって里に着いて、組んでいた仲間と共に報告、それが終わって解散、という流れを経て、ほっとしたのもあってか、いまはもうめちゃめちゃ頭が痛い。
ずきん、ずきん、と脈を打つこれは、偏頭痛。
仕方ない、今日は大人しくしてるしかないな、と残念ながら思う他なかった。
でもなんか家にいるのもつまらない。

そうだ、少し遠いけど、あのお昼寝スポットででも休むことにしよう。
そう思い付いて、だるい頭を持ち上げながら町中を歩いていると、いのとチョウジに会った。

「あらもふこ、任務帰り?」
「うん、そーだよ!二人も?」
「ううん、ぼくたちは今日休み。夕飯ね、焼き肉一緒に食べるんだ。シカマルも後から来るよ、もふこも来る?」
あ、楽しそうでいいなあ、と思ったが、私の頭は未だにむかつくぐらい不調。仕方ないから顔に出さないように、へらへらとしておく。
「いきたい〜けど今日焼き肉食べたら確実胃もたれするからやめとく〜」
「なによつれないわね。あ、そういえばもふこ、あんたシカマルになにしたの?」
「え、なんで」
「なんかまた、いつも以上にむすっとしてたわよ。ま、どうせあんたのことだからまた変なことしたんでしょうけど」

あ、忘れてた。
ああ、すっかり任務終わりの気分で、そんなことをしたこと、記憶の彼方に吹っ飛んでいた。
あ〜あ怒られんのやだな、と露骨に私がめんどくさそうな顔すると、自業自得でしょ!と正論を笑ってぶつけられた。
そうなんだけどさ。

「シカマルにこれからずっと会わない方法とかあるかな」
「そんなの寂しいよー」
「そうかあ、でも、ああ」
こんな絶不調時に、シカマルの小言聞くなんて耐えらんないかも。
「なに、どうしたの?」
「あ、いやなんでも。」
とりあえず笑って、ご飯楽しんでね、と別れることにした。


それから極力人通りを避けて、私の好きなお昼寝スポットに辿り着いた。
ここまでくれば、もう安心だ。
ごろり、と草むらに横になって目を瞑れば、幾分か頭の痛みがましな気がしてきた。
はあ、疲れた。


「…おいもふこ」
ああ、頭痛。


そろりと片目を開けば、綺麗な空をバックに、いつもの不機嫌顔。
「やっほ」
「やっほ、じゃねぇ」
むくりと上半身を起き上がらせると、当たり前のようにシカマルが隣に座った。

「ニジマス美味しかった?」
「お陰で今、家じゃあニジマス祭りだっつの」
「なにそれ楽しそ〜」
こちらを向いた、むっすりとしたその顔は、私にとってすごく面白くて楽しいこと。だから自然とにっこりしちゃう。だけど、今はそれどころじゃなくて、頭の中は"痛い"のオンパレード。完全に楽しめないじゃない。もったいないなあ。こんなの。

「…ほんとお前よぉ、朝一番に、しかも床にってやめろよな。危うく水溜まりにはまるところだったぜ」
「うわあ、あのあとの様子見たかったなあ、すごい慌てたりした?」
「驚かねー方が変だろ」
「あ〜あ、任務だったのがほんと悔やまれるよ」
元気にそう笑えば、瞬間、ふ、とシカマルがこちらを向いて止まる。

「…熱あんのか」
「、え?」
なに、と呟くと同時に、手をとられたと思ったらすぐに引っ張られて、おでこに手。

「少しあるみてぇだな。頭、痛ぇんだろ」


「な、んで、わかるの…」
驚きのあまり固まったままそう問えば、少し笑われる。

「顔見りゃ分かるだろ。笑えてねえ」

「え、でも、だって…いのとかチョウジには、なんにも、」

「じゃ、あいつらより、俺の方がお前のこと見えてるってことだな」

「、え」

「なんだよ。痛ぇの増したか?」
「あ、いや、…ふふ」
なんとなく照れちゃったけど、それよりも嬉しい方が勝ってしまって、思わず、シカマルー!と叫びながら飛び付いてしまった。

「っおい、暴れんな酷くなるぞ」
「だってねーシカマルが悪いんだもんなー」
「はあ?」
「お礼に、これからもちゃあんと素敵な悪戯をしてあげよう!」
「何回やめろって言えば分かんだよ!」

そう言った顔が少しでも柔らかい限り、何を言われたって私は、"アイジョーヒョーゲン"であるそれをやめるつもりは全くないのだった。





160408



◎ちょっと甘やかし気味なやつ。あれ、シカマル同期かくの、面白い、かも…。







 



-Suichu Moratorium-