私とやつの、甘えた関係3
「なんだか最近、すごくつまらないんだよね…」
お茶屋で、いつもの女三人。
荒んだ日常の中で、久しぶりにまったりできる時間だ。
やっぱり前半はいつも通りに男だの女だの、そーいう話をした。サクラもいのも、そーいうのが好きだから、とっても楽しそうだった。
私も別にそーいうのが嫌いな訳じゃないし、人の話を聞くのは好きだ。でも私にそーいう話はできない。
いつものルール、みたいな感じで乙女二人は一応、私にもその話題を振ってくれるけど、私はいつも通りに顔を顰めて顔を横に振るだけだった。
それに対して、いつもよりご機嫌斜めじゃない?といのに突っ込まれたから、私は素直に、ツマラナイのだ、と先ほどの相談のようなことを言ってみたのだ。
「もしかして、それって、誰にもイタズラしなくなったからじゃないの?」
「うーん、でもさ、たまにしてるんだよ。最近だと、やりやすいからナルトとかイルカ先生とかに」
「またそんなメンツに…」
「やっぱりシカマルにするのはやめたの?」
軽く笑ってサクラがそう言うから、私は少し考え込んだ。
「…だって、なんか知り合いに変なこと言われた…って言ったでしょ、あれって私が構ってほしいからみたいに受け取られるって意味でしょ、そう聞いたらなんか、やりたくなくなっちゃって」
素直じゃない子。
微かにいのの唇がそう動いた気がしたけど、私にはどういう意味か分からなかった。
なにそれ、と言おうとしたところサクラが身を乗り出してきたから言いそびれる。
「…もしかして、もふこって……シカマルのこと嫌いなんじゃないの?」
「え」
きらい。
きらい?
突然の思いもよらない発言に、ぐるぐる、ぐるぐると回るその言葉。
きらい、きらい…
「わ、たしが、シカマルのこと、きらい?」
「だってさ、いっつも嫌がらせみたいなことしてたでしょう?」
何故だかにやついたサクラに追い込まれるようにそう言われると、私の今までの良くないと自覚はしている行動が頭の中で、流れるように再現されていく。
ああ、でも、私はそれを、彼が嫌いだから、やっていた?
でも確かに、他の人にやるよりかは楽しんでやっていた節はある。
嫌がらせが楽しかったのは…。
なんでだ?
「……ちょっともふこ?」
「あ、ごめん。ちょっと…考えてくるから、じゃ」
ここにいては考えが纏まらない。
名残惜しいことこの上ないけど、考えたい気持ちが強い。
私はその場を後にして、自分の気持ちを整理するためにその場を離れることにした。
(ちょっとサクラ…。なにやってんのよ)
(だ、だって。私はてっきり、「そんなことないよ!」ってなって、じゃあ好きなのね?って言えるはずだと思って…)
(ばか!)
▲
やっぱりいつまでもお馬鹿さんなもふこが滑稽なほど深刻な顔をしてこのお茶屋から出て行ってから数分後、いつもの呑気な顔した問題の中心核が現れた。
「よお」
「あらシカマル」
「もう一人のお馬鹿さんのお出ましね」
私が澄まして皮肉を言えば、何にも分からないシカマルは、あの見飽きた怪訝な顔をするし、目の前のサクラは少し面白そうな顔をした。
「なんだよそれ」
「べっつにぃ…」
そのまま何も話さないでいると、向こうは面倒くさくなったのか、溜息一つついて、また元の表情に戻した。
「ところでよ、もふこ知らねぇか?」
私とサクラは顔を見合わせる。
「なんで?」
「いや…最近見ねぇから」
「え、会ってないの?」
「そうじゃねぇんだけど、なんか変なんだよな」
「…”余所余所しい”?」
「あー、そんな感じか。とにかく、様子がおかしい。なんか知らねぇ?」
「知らない…こともないけど」
私がそう言えば、思った通りに、ほんの少しだけ救われたような顔をするしかめっ面。
このまま真相を教えるのも癪だ、と思って、少し自覚を持たせるように仕向ける。
「でも、もふこがちょっかい出さなくなって、少し寂しいんでしょ?」
「…は」
「やっぱりね」
サクラがにやりと笑うから、私もつられて笑う。
シカマルは凄く嫌そうな顔をしているところをみると、こいつも全く自覚がないみたい。ほんとに二人そろって馬鹿だし素直じゃないんだから。
このままだと埒が明かないから、もふこが悪戯をしなくなった理由を少しだけ説明してあげることにした。
○
「…そういうことだったのか」
「そう。安心した?」
「…まあ、なんか俺がやべぇことしたかと思ったから、マシっちゃマシな理由で良かったっつうか…」
「あら以外に素直」
「るせぇ。…でも、あれがマジの嫌がらせだったのかと思うとすげぇやだな…」
「確かに…。シカマルのは特に凄かったしね」
でもそんなことは有り得ないのは、私もサクラも知っている。
だけど、今すぐコイツに教えてあげるは、ちょっと違う。
こいつももふこも、きちんと自分で考えなきゃいけないんだって、私たちは考えたから、少し回りくどいし面倒だしつまらないけど、我慢して付き合ってあげるの。
少し冷めたほうじ茶を飲んでから、多少心配そうなシカマルの顔を見て微笑んでやる。
「やっぱり結構心配そうよね」
「…そこまでじゃねぇよ」
「うそばっかり。シカマルってば、昔からもふこのこと気にかけてたし、心配してて当たり前よ」
「は。気にかけてた?」
「そーよ!もふこがいれば目で追っかけたりして。最近までずーっと!」
「それは、あいつが何やらかすか分かったもんじゃねぇからよ」
それだけじゃないはずよね、とサクラに小声で言って笑えば、シカマルは悪態をつきたそうな顔をしてから、じゃあなと一言置いて、さっさと帰ってしまった。
「やっぱりシカマルってまるっきり自覚ないのね」
サクラが呆れたように言ったから、深く頷く。昔からあいつはそうだ。周りのことには気付けても、自分の中の些細な変化には鈍感。
「あーあ、これが丸く収まるのは、いつになるのかしら」
私の欝々した気持ちは、当事者のそれなんかより酷いんじゃないか、とちょっと遣る瀬無くなってしまった。
上手くいった暁には、この心労を美味しいものに変換して返して貰いたいものだ。
160829
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